経営・戦略

2024.02.25 08:00

航空大手ボーイングが直面する「熟練工の消滅」とトラブル頻発の関係

Getty Images

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航空業界コンサルタントのクリフ・コリアーはここ数年、この分野の工場フロアを歩いていると20代の労働者が多いことに気づくという。「私のこれまでのキャリアで見たことがないほど多くの若い人たちを目にします」と彼は語る。
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手作業が多い複雑な組み立て工程をマスターするために何年もかかることもあるこの業界で、これは大きな変化だ。コリアーが見た若い労働者たちは、コロナ禍の間にボーイングや同社のサプライヤーで人員削減の対象になった何万人もの経験豊富な労働者たちの代わりに入社した。

コリアーをはじめとする航空業界の専門家たちは、ボーイングと同社の機体サプライヤーであるスピリット・エアロシステムズがここ数年直面している問題の背景に、熟練した労働者たちの離職があると指摘している。1月には、アラスカ航空が運航するボーイング737MAX9型機の側壁が離陸直後に吹き飛ぶ事故が発生したが、この事故の原因は、事故機の工場の作業員が、スピリット社で誤って取り付けられたパーツを交換するためにパネルを開けた後、パネルを固定するために必要な4本のボルトを締め忘れたことにあるとされている。

ボーイングはまた、同社のベストセラー機である737MAXジェットの約50機について、スピリット社の作業員が誤って開けた窓枠の穴が原因で補修が必要になると発表した。さらに12月に同社は、最近納入された737MAX機のオーナーに対し、ラダーコントロールシステムのボルトに緩みがないかを点検するよう求めていた。また昨年夏には、スピリット社の作業員が後部隔壁に不適切に開けた穴が原因で、同機の生産を遅延させていた。
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フォーブスの取材に応じたボーイングの従業員や元従業員たちは、新人に対するトレーニングをもっと充実させれば、このような問題は避けられたはずだと語った。「工場の管理体制が適切であれば、彼らは素晴らしい仕事をする」と、2019年に2件の737MAXの墜落事故について議会で証言した同機の工場の元マネージャー、エド・ピアソンは語った。「しかし、管理が雑だったり、納期が遅れていたり、人々が疲れていたりすると、経験の浅い作業員がミスを犯すおそれがある」と彼は続けた。

ボーイングは、従業員の離職の影響やトレーニングについてのコメントを避けた。

「熟練工」の消滅

労働者たちの年齢構成の変化は、シアトル地域のボーイング工場労働者を代表する3万1000人の組合員にも現れている。組合幹部がバンク・オブ・アメリカのアナリストに語ったところによると、コロナ禍以前は半数以上が6年以上の経験を持っていたが、現在は、同様のキャリアを持つメンバーの比率は25%以下であるという。

ボーイングは2020年に、コロナ禍の影響で新型機の需要がほぼ完全に崩壊したことを受け、2万8000人の労働者を解雇した。しかし、その後は工場が再び軌道に乗ったことで、2021年から2023年にかけて5万5800人を新たに雇用した。

アーンスト・アンド・ヤング(EY)で航空宇宙・防衛関連企業のコンサルタントを務めるラマン・ラムは、航空業界全体で、書き留めることができない専門知識を持つ年配の労働者たちが職場を去ったと述べている。その結果、工場におけるトラブルが増加したと彼は言う。「工場内の新入社員の割合が増えれば、3カ月後には品質問題が発生する確率が高い」とラムは指摘した。
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編集=上田裕資

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