確かに中国は世界第二位の経済大国だが、経済面そして政治面で実際に何が起きているのか、我々はほとんど知らない。過去10年間、欧米の投資家は国内総生産(GDP)のような主要な経済指標を重視せず、電力使用量のようなミクロ指標を好んで用いてきた。当局が発表する指標は「実態を反映していない」との懸念からだ。政治的にも、中国は「開かれた国」とは言い難く、それゆえに中国政府の意図を読み取ることが難しい。明快さの欠如により、投資家は中国から遠ざかっている。
それを反映して、中国の資産のパフォーマンスは低迷し、株式のバリュエーション(株価評価)は非常に低くなっている。例えば、アリババとアマゾンのパフォーマンスを比較してほしい。そこには、投資家が中国に対して抱いている懸念が織り込まれているのではないかと考えることもできる。
具体的には、米中関係と台湾をめぐる紛争のリスク、中国経済の構造的リスク(欧州の読者なら中国の不動産市場のリスクを認識しているだろう)、そして経済政策決定における緊急性の欠如だ。
こうしたリスクの一部は、差し当たっては和らぎつつある。台湾の総統選挙は何事もなく終わり、米中の外交対話も改善した。
経済的には、リスクは依然としてある。中国は今後10年間、「大計画」を軌道に乗せるために年4%近い成長を望んでおり、またそれを達成する必要がある。ここ数十年、中国は大きな不況を経験していないが、その結果、過剰となっている生産能力や非効率的な投資、膨大な債務など、構造的な不況の要因が蓄積されつつある可能性が高い。米国との新たな貿易戦争(トランプ前大統領が再選を果たせば必ず起こるだろう)や、電気自動車(EV)のダンピングに対する欧州の厳しい姿勢など、外部リスクは残っている。
筆者の感覚では、2010年代半ばにユーロ圏がそうだったように、大きな市場が「投資できない」と見なされたら、そろそろ投資案件を温め始めるときだ。中国は割安だが、圧倒的な刺激やちょっとした危機的状況(貿易戦争や債務問題の噴出)のような誘因はまだない。
(forbes.com 原文)