これにより、ダークエネルギー(宇宙の膨張を加速させているとされる未知なる力)や暗黒物質(宇宙に普遍的に存在する謎に満ちた未知の物質)の本質に迫る理論物理学研究が進展すると期待される。
この望遠鏡は、突発天体と呼ばれる急激な光度変化を起こす天体現象の観測に特化している。運用開始から10年間にわたって実施する「時空間レガシーサーベイ(LSST)」では、現在の天体物理学の理解を覆すような、まれな現象の観測にも挑む。
突発天体現象とは何か?
突発天体現象とは、厳密に言えば「何か新しいもの」のことだと、南アフリカ大型望遠鏡(SALT)で突発現象の観測を行っている主任研究員デービッド・バックリーは説明した。チリ・プエルトバラスで昨年12月に開催された会議「ルービン時代の宇宙ストリーム」でのことだ。しかし実際には、変動を伴うあらゆる現象を指しており、それまでまったく知られていなかったところに突如として出現した天体現象も含むという。高速青色光過渡現象(FBOT)も、そうした現象の一つだ。
英サウサンプトン大学の天文学者マーク・サリバンによると、FBOTは驚くほどまばゆく短時間しか持続しない閃光現象だ。これまで観測されたものは、何らかの爆発に起因するとみられている。白色矮星の爆発によって突然明るく輝く超新星は、太陽の約100億倍の明るさが数週間に続く。だが、FBOTは出現から消失までの時間が非常に短いため、天文学者が詳細に調査して正体を解明するのが困難だという。
FBOTの正体とは何か。
サリバンによれば、FBOTは星周物質の内部で発生した超新星爆発だという仮説がある。星周物質とは、星から放出され近傍にとどまる物質のことだ。超新星爆発の衝撃波がこれらの物質に衝突し、超高温に加熱することで超高輝度の突発現象が生じると考えられるという。
ベラルービン天文台のLSSTにより、FBOTが数百個は発見できるのではないかと期待されている。
だが、こうした現象の正体を突き止める上で本当に重要なのは、データストリームの中でとにかく迅速に、ごく早期に現象を発見することだとサリバンは言う。