赤色矮星の活動をとらえる
ベラルービン天文台は、主としてM型赤色矮星に由来する恒星フレアが、宇宙における生命の誕生にどのような影響を与えるかについても、研究者の理解を促進するだろう。米デラウェア大学ニューアーク校で天体物理学を専攻する大学院生ライリー・クラークは、赤色矮星フレアの持続時間の中央値は約30分であり、いつ起こるかは予測できないと語った。このため、ほとんどの天文学調査では観測が非常に難しいという。
クラークと共同研究者たちは、LSSTを利用して、単発のフレア現象の画像から十分な情報を抽出し、恒星物理学者にとって有益な知見を引き出せるのではないかと考えている。
クラークによれば、地球の大気の屈折特性を利用すれば、フレア発生中に恒星が天球上をどれだけ移動したかに基づいてフレアの温度を推測できるはずだという。天球上における恒星の位置は、その星の色と相関関係があるとクラークは説明する。
プールの底に沈んだ物体を水の外から見ると、物体の位置は実際とズレて見える(屈折現象)。微分色屈折(DCR)と呼ばれる大気の屈折特性は、恒星の光に対して同じ作用をもたらす。つまり、恒星の光が地球大気を通過する際には、光源のスペクトル・エネルギー分布の影響を受けるのだ。
クラークによれば、短波長の光が多いほど青く見えるという。
LSSTは、10年間の調査で約300万個の赤色矮星フレアを検出すると予想されている。フレアによって恒星の表面温度は1万ケルビン、すなわち太陽の表面温度の約1.5倍にまで加熱される。ベラルービン天文台で観測が期待されているのは、こうした「輝度の突然の上昇」だ。
フレア現象のメカニズムや頻度を理解することは、単なる天体物理学への貢献にとどまらない。多くの宇宙生物学者は、宇宙で最もありふれた恒星である赤色矮星こそ、至近の地球型惑星に生命を誕生させる有力候補だとみている。フレア活動があまりに頻繁に発生する恒星があれば、周囲に生命が存在可能な惑星がある確率は低いだろう。
その一方でフレアは、こうした赤色矮星の軌道上にある系外惑星に生命をもたらすきっかけになる可能性もある。
確かなことはわからないものの、フレアが発する紫外線エネルギーが、生命の前駆体を生み出す触媒として作用する可能性がある。紫外線が化学的性質を絶妙に撹乱して、化学反応を促進させる可能性はあるだろうとライリーは述べた。
(forbes.com 原文)