アート

2024.02.25 15:00

杉本博司と本歌取り 人を「驚かせたい」という遊び心

「歴史をたどりながら、表現のインスピレーションを常に考えていますね。アメリカに住んでいるときはアメリカ史をきちんと入れておきたいと思いましたし、近年、建築の仕事ではアラブ圏からの依頼もあるので、その地域の歴史なども知っておかなければならない。若いころに読んだ評論や小説なども自分の中に澱のように溜まっているのでしょう。

それは簡単に抽斗のなかから出てくるというものではなくて、何かのきっかけで、ふと、つながっていくものです。脳細胞のなかで細かいシナプスが小さな発光をする。そんなときに閃くということでしょうか。長年、考えていたことが技術的に解決し、実現することもあります」

教養に裏づけられた思考、先人の仕事に対する畏敬の念、人を喜ばせよう驚かせようというサービス精神、創造するものに対して妥協を一切しない職人的な努力。それらすべてがこのアーティストの価値を保証していることが伝わってくる。

Art, The Endless Loop of Creation

Forbes JAPAN 2月24日発売号は、小特集『つくる、見る、企てる アートを巡る創造の循環』を掲載。アートもビジネスも、アウトプットを遡ればなんらかのインプットがある。すでに存在するものをどうとらえ、どう解釈し、新たな価値や意味を生み出すか。この循環をキュレーター、アーティスト、研究者、コレクターなど、アートにかかわる複数の視点から考える──


杉本博司◎1948年、東京都生まれ。1970年に渡米、1974年よりNY在住。写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、執筆、料理、伝統芸能の演出など活動分野は多岐にわたる。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」、2009年公益財団法人小田原文化財団設立、2017年江之浦測候所オープン。

文=鈴木芳雄◎1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1982年マガジンハウス入社。複数誌の編集部を経て、2001〜2010年「ブルータス」副編集長。現在は美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画、美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなどを手がける。

文=鈴木芳雄 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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