それは簡単に抽斗のなかから出てくるというものではなくて、何かのきっかけで、ふと、つながっていくものです。脳細胞のなかで細かいシナプスが小さな発光をする。そんなときに閃くということでしょうか。長年、考えていたことが技術的に解決し、実現することもあります」
教養に裏づけられた思考、先人の仕事に対する畏敬の念、人を喜ばせよう驚かせようというサービス精神、創造するものに対して妥協を一切しない職人的な努力。それらすべてがこのアーティストの価値を保証していることが伝わってくる。
杉本博司◎1948年、東京都生まれ。1970年に渡米、1974年よりNY在住。写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、執筆、料理、伝統芸能の演出など活動分野は多岐にわたる。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」、2009年公益財団法人小田原文化財団設立、2017年江之浦測候所オープン。
文=鈴木芳雄◎1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1982年マガジンハウス入社。複数誌の編集部を経て、2001〜2010年「ブルータス」副編集長。現在は美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画、美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなどを手がける。