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2024.02.20 09:30

エヌビディアの投資部門が支援する「次世代AI企業」20数社の中身

生成AIブームの前から投資を開始

生成AIのブームが始まる前に活動を開始したエヌベンチャーズは昨年12月、2023年以降にヘルスケアやエンタープライズ、物流などの分野の合計14件の投資をアナウンスしたと発表した。同社のウェブサイトは1月に開設されたばかりだ。

シディークはフォーブスの取材に、詳細は明らかにしなかったものの、エヌベンチャーズが今年に入り、すでに「2、3件」の投資を行ったと語った。フォーブスが投資先企業の7社に話を聞いたところ、その中には、シリコンバレーで今最も求められているリソースであるエヌビディアのチップへのアクセスが良くなったと主張する企業もあったが、具体的な取引条件は明かさなかった。

「VIP待遇と呼ぶのは少し大げさだが、この関係がなかった場合よりは少し良くなった」とMindsDBのホルヘ・トーレスCEOは語った。同社は、「AI開発におけるアマゾン・ウェブ・サービス」を目指すスタートアップと呼ばれ、昨年8月にエヌベンチャーズからの出資を受けていた。

エヌベンチャーズは、GPUへの優先アクセスは許可していないとフォーブスに語った。しかし、だからといって同社の投資先が交渉の過程で、その要求を出さなかった訳ではない。「自身で物事を決定し、行動するAIエージェント」の開発を目指すImbue(インビュー)のCEOの、カンジン・チウは「優遇されないことはわかっていますがとりあえず聞いてみました」と笑いながら話した。同社は昨年9月に、エヌビディアを含む投資家から2億ドル(約294億円)を調達し、評価額が10億ドルに達したと発表した。

エヌベンチャーズは、エヌビディアのバランスシートから投資を行っているが、今は絶好のタイミングだ。調査会社Omdiaによると、エヌビディアのGPUは世界のAIチップの売上の70%以上を占めており、昨年第1~3四半期の売上高は、388億2000万ドルに達していた(エヌビディアは2月21日に第4四半期の業績を発表する)。同社が昨年11月に発表した第3四半期の売上高は前年同期比200%以上の増加となり、その結果、時価総額は急上昇し、エヌビディアは今やアルファベットやアマゾン、メタを抜いて世界で4番目に価値のある企業となっている。

エヌビディアの出資を受けることのもう1つのメリットは、レザージャケットを着た同社のリーダーのジェンスン・フアンCEOからの助言を得られることにある。インビューのCEOのチウはある時、幹部の給与についてファンにアドバイスを求めるEメールを送ったところ、すぐに返事が来たと述べた。「彼はとても気さくな人で、それ以来ずっと連絡を取り合っています」と彼女は語った。

また、ファンからの助言以外にも、創業者たちは、エヌビディアのチームから迅速な回答が得られると述べている。物流ハブ向けの自動運転トラックを開発しているOutrider(アウトライダー)のボブ・ホールCTOは「彼らのチームへのアクセスと、エヌビディアの内部でエヌベンチャーズが要視されていることは、我々にとって大きな後押しになりました」と語った。
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編集=上田裕資

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