復興に向かう道のりで直面する課題は、過去の地震や津波から学び、必要に応じて計画を修正する重要性を示しています。
世界が足並みを揃え、異なる災害から得られた教訓を統合したより包括的でレジリエント(強靭)な災害対策を講じるためには、官民とNGOの国を超えた連携を強化する必要があります。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。
2024年、新年を迎えた日に、石川県の能登半島を最大震度7(マグニチュード7.6)の地震が襲いました。
石川県では、241人の死亡が確認され、住宅被害は6万5000棟を超えました。冬の厳しい寒さの中、多くの住民が被災し、発災から1カ月が経った時点でも約1万5000人が避難所に身を寄せています。自宅から離れた地域にある旅館やホテルなどの「二次避難所」で生活しているのはこのうち約5000人。
避難所生活が長期化し、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの急性呼吸器系感染症が拡大しつつあり、石川県の避難所における感染者数が100人を超える日が続きました。
被害を増幅した地域特性
半島奥地という地域条件や、過疎化・高齢化という社会環境といった地域特性が脆弱性となった今回の地震被害。土砂崩れなどで道路網がほぼ壊滅したことで、能登半島の沿岸や山間部にいくつもある集落が孤立し、被災者の生存率が落ち込むとされる発災後72時間までの安否確認や救助活動、また物資輸送に課題が生じました。人口がこの10年で17%減少した能登地域。今回特に甚大な被害を受けた、珠洲市、輪島市、能登町、穴水町は、2050年までに住民が半減すると推測されていました。過疎化により高齢者だけが暮らす、改修を行わないままの世帯が多いという背景が被害を広げました。珠洲市の住宅耐震化率は51%、輪島市は45%と全国平均の87%を大きく下回っています。
また、過疎地域では、機能が損なわれたインフラの復旧にも時間を要します。今回の地震で特に壊滅的な損傷を受けたのが水道網。発災から1カ月以上が過ぎた段階で、県内7市町の約3万7500戸で断水が続いています。
過去の教訓から、迅速な対策を
こうした復興プロセスで直面する課題は、過去の地震や津波から学び、必要に応じて計画を修正する重要性を示しています。また、予期せぬ大きな被害が発生した場合は、迅速かつ柔軟に対応する事も必要です。1995年の阪神・淡路大震災以来、大規模な地震に何度も見舞われてきた日本では、耐震や防火など、地震を念頭に置いた防災体制の強化やインフラの整備などが重要視されてきました。災害時の一般車の使用を制限できる「緊急輸送道路」の導入が全国で広げられたのも、阪神・淡路大震災で主要な幹線道路の寸断により、緊急車両の通行が妨げられた教訓からです。