経営・戦略

2024.02.21 10:45

アマゾンのiRobot買収断念に学べ 日本企業がGAFAに打ち勝つ、時限は2024年

露原直人

チャンスは2024年中

これは日本企業にとってはまたとないチャンスだ。

日本はグローバルの流れとは裏腹に低金利(ほぼゼロ金利)状態が続いている。そのため資金調達が容易であるだけでなく、企業内の内部留保が積み上がっていることで、投資や買収に向けられる資金には余裕がある。特に海外での売り上げ比率の大きい会社は円安の恩恵にもあずかっているはずだ。

景気が良かった頃には相手にもしてもらえなかったような米国の優良スタートアップも、いまは喉から手が出るほど資金の出し手を探している。エグジットが見えない彼らにとってはほとんど有利な交渉材料がないため、投資や買収のオファーにおける企業価値はかなりのディスカウントが期待できる。

日本は1980年代後半から1990年代初頭のバブル期以来、すっかりテックイノベーションの波に乗り遅れてしまった。しかし、いまは日本にとっての好条件が揃っており、このチャンスを逃してしまうのはあまりにももったいない。GAFAMがどんなに欲しくても買えないようなスタートアップにもアクセスできるかもしれないのだ。

いまこそ自前主義を捨て去り、本当の意味でのオープンイノベーションを仕掛ける時だ。これまでのような国内だけに目を向けたCVCによるマイノリティ出資や、試してみるだけで終わってしまうPOCを繰り返すのではなく、グローバルの大きな流れに乗って、自分たちだけではできなかった新規事業開発に大きく舵を切るべきである。

このチャンスのウインドウが開いているのはおそらく2024年いっぱいだけではないだろうか。今年はどこかのタイミングで米国の金利引き下げが予想されており、11月の大統領選挙が終わって景気の見通しも良くなってくれば自ずと投資は戻ってくるし、IPOも可能性が開けてくる。

いま日本企業がやるべきことは、大きなテクノロジーの流れを見据えながら、主体的に新規事業の戦略を立て、積極的な投資・買収を仕掛けていくことだ。いま、ここで優秀なスタートアップと組むことができれば、これまで遅々として進まなかったオープンイノベーションの活動を一気に加速させることができるだろう。

文=村瀬 功 編集=露原直人

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