ロシアの刑務所から16日に死亡が報告された時点では、ナワリヌイの側近は死亡を確認することができないと述べていた。ところが翌朝、ナワリヌイの広報を担当するキラ・ヤルムイシュがX(旧ツイッター)に、ナワリヌイは「殺害された」と投稿。ナワリヌイの母親に宛てられた通知によると、死亡時刻は16日午後2時17分だったという。
ヤルムイシュは一連の投稿で、ナワリヌイの遺体引き取りが難航している様子を伝え、当局に対し、遺体を「ただちに家族に引き渡す」よう要求した。
ロシア当局筋は、ナワリヌイの遺体は収容されていた刑務所に近い北極圏の辺境の町サレハルトの遺体安置所で、委員会が調査中だと説明。だが、ヤルムイシュは、ナワリヌイの母親と弁護士がサレハルトの遺体安置所に到着すると、遺体はそこにはないと職員から告げられたと述べた。サレハルトの捜査委員会に問い合わせたところ、死因はまだ特定されておらず、新たな検査が行われており、その結果が判明するのは翌週になる見通しだという。ヤルムイシュは「当局がうそをついているのは明らかで、あらゆる手を尽くして遺体の引き渡しを避けている」と訴えた。
捜査委員会はナワリヌイの側近に対し、捜査が終わるまで遺体は引き渡さないと伝えた。ところがヤルムイシュはそのわずか15分後、捜査が終了し、犯罪行為は立証されなかったと弁護団に伝えられたと投稿。「当局は文字どおり毎回うそをつき、私たちを堂々巡りに追い込み、痕跡を消している」と指摘した。
ロシアの刑務所によると、ナワリヌイは散歩の後に気分が悪くなり、意識を失ったという。現場に駆けつけた医療関係者はナワリヌイを蘇生させることができず、現在まで死因も特定されていない。死の前日、ナワリヌイはオンラインで裁判に出廷しており、裁判官と冗談を言い合うほど元気な様子だったと伝えられている。
ナワリヌイはプーチン大統領の批判者の中でも最も影響力のある1人として知られ、すでに一度、毒殺未遂から生還している。ナワリヌイは過激主義を扇動した罪による懲役19年の刑をはじめ、複数の実刑判決を受けていた。ナワリヌイの支持者はこうした一連の刑を、政治的な動機によるものだと見なしている。特に、北極圏の流刑地に予告もなく、居場所も知らされずに移送されたことを受け、側近はナワリヌイの身の安全を懸念していた。
米国のジョー・バイデン大統領は16日の演説で、ナワリヌイの死はプーチン大統領の責任だと非難した。各国の首脳も、犯罪行為のせいでナワリヌイが死に至らしめられた可能性があると発言していることについて、ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は「言語道断であり、絶対に容認できない」と応酬。ロシア外務省のマリヤ・ザハロワ報道官も、西側の首脳が法医学的検査の結果を待つことなく「ナワリヌイの死を巡り、お決まりの反応を示した」と非難した。
ロシアの独立系人権保護団体OVDインフォは、国内各地でナワリヌイを称える追悼式典に出席していた270人以上が拘束されたと伝えている。
(forbes.com 原文)