欧州

2024.02.19 13:00

ロシア軍、最新のT-90戦車を一度に4両失う 攻勢の裏で損害ますます拡大

テルニー近辺での小競り合いは、場所は少し離れているが、ロシア側がアウジーイウカで収めようとしている「勝利」が、どのような代償の上に成り立っているのかを浮き彫りにしている。

アウジーイウカ方面の4カ月以上にわたる攻撃で、ロシア軍の第2、第41両諸兵科連合軍は数万人にのぼる死者・重傷者を出し、戦車やその他の戦闘車両、榴弾砲といった重装備を650両超失った

アウジーイウカ方面ではウクライナ側の人的損失も多いものの、それは守備隊の中核で2000人規模だった第110独立機械化旅団に集中している。ウクライナ側のこの方面での車両損失は50両ほどとなっている。

ウクライナにいるロシア軍には機会費用も生じている。ロシア軍は兵員や戦車だけでなく、大砲や航空支援、兵站なども含めて戦闘力をアウジーイウカ方面に集めた結果、ほかの方面では部隊への支援がその分薄くなった。

ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は「敵はアウジーイウカの攻略に力を集中させている。(中略)リソース不足のため、ロシア軍司令部はほかのすべての前線で前進ペースを落とすことを強いられている」と分析している

ウクライナで2年にわたり繰り広げられてきた激戦でわかったことがあるとすれば、過度に拡張したロシア軍の突撃部隊は味方から十分な支援を得られず、ウクライナ側の攻撃に対してきわめて弱いということだ。

ロシア軍はアウジーイウカ方面では突撃部隊を支援するために砲弾を1日に何千発も撃ち込み、空中から滑空爆弾も何十発も落とした。だが、自軍最高の戦車がテルニーに突っ込んでいったとき、支援はどこへ行ってしまっていたのか?

ロシアはあすにでも戦車などの戦闘車両や兵士が足りなくなるという人はいないだろう。年内にそうなると主張する人すらおそらくいない。ロシアは国内総生産(GDP)に対する国防費の比率を以前の2%から現在はおよそ10%まで高めているし、操業を止めていた兵器工場を再稼働させている。また、ウクライナで被った30万人に達する人的損失を補うために、新たに数十万人を徴兵したり募集したりしている。

英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の新たな研究によると、ロシアの産業界は現在、戦車を1年で約1500両生産している

だが、非常に重要なのは、これらの戦車の80%は長期保管されていた冷戦時代の古いモデルを再生しているものだという点だ。ロシアの古い戦車やその他の車両の在庫には限りがあり、向こう2年かそこらで枯渇し始める可能性がある。

RUSIの見積もりが正しいとすれば、ロシアが2年間に巨費を投じて動員したにもかかわらず、産業界の新しいT-90MとT-72B3M戦車の年間生産能力は300両ほどにとどまっている。ロシア軍は今回、1回の攻撃失敗で1日に4両のT-90を失った。これはロシアが補充できるペースをはるかに上回る損失である。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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