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2024.02.17 15:30

自爆テロに向かう2人の48時間 | パレスチナ問題を知る映画「パラダイス・ナウ」

『パラダイス・ナウ』のハニ・アブ=アサド監督(中央)と出演者たち / Getty Images

『パラダイス・ナウ』のハニ・アブ=アサド監督(中央)と出演者たち / Getty Images

パレスチナのガザ地区を実行支配してきたイスラム抵抗組織ハマスが、昨年10月7日に行った奇襲をきっかけに開始されたイスラエルの報復攻撃は、現在ガザに、身元が判明しているだけでも3万人近い犠牲者を生み出している。

この戦後最悪のジェノサイドに対して、世界各地で行われた市民による抗議行動にも関わらず、西側主要国はイスラエルへの有効な牽制を行えていない。ネタニヤフ首相は、2月初旬にハマスから出た休戦案を蹴り、地上作戦の遂行を宣言している(2月16日現在)。

日本では、今回のガザへの爆撃が始まるまで、パレスチナ問題に一般の関心が集まることは少なかった。地域的に離れていることと、長らく組織によるテロが国内で起きていないことなどが理由だろう。まして、テレビニュースを通じて、私たちがテロを行うような人々のリアリティに触れることもほとんどない。

もっとも、今回パレスチナ擁護の立場を取る人の間にも、テロは決して容認しないという意識は根強くある。特に自爆テロは日本人にとって、太平洋戦争時の神風特攻隊を思い起こさせることもあり、忌避感は強い。

彼らはいったいどのようにしてテロ行動に駆り立てられるのだろうか。

イスラエルへの報復作戦に選ばれた2人

今回紹介する『パラダイス・ナウ』(ハニ・アブ・アサド監督、2005)は、自爆テロに向かう2人のパレスチナの若者の48時間を、緊張感漂う現地ロケで描いたドラマである。フランス、ドイツ、オランダ、パレスチナの共同制作による本作は、ベルリン国際映画祭の三部門およびゴールデングローブ賞最優秀外国語作品賞を受賞し、2007年に公開された日本でも話題となった。

2000年代初めのパレスチナ自治区は、封鎖と支配が強化され、生活環境の悪化が改善されない中、イスラエルの強行姿勢に対する自爆攻撃が相次いでいた。2002年からはヨルダン川西岸地区で巨大な「隔離壁」建設が開始され、国際法違反と裁定されたにも関わらず、建設は続行された。現在この地域では、以前にも増してイスラエル人入植者によるパレスチナ人への暴力が横行しており、「自治区」とは名ばかりの状態だという。

ドラマの舞台は、そのヨルダン川西岸地区にあるナブルスという街(字幕で「パレスチナ自治区」ではなく「イスラエル占領区」とされている)。

自動車修理工のサイード(カイス・ナーシェフ)が客の理不尽なクレームに手を拱いている。そこにやってきた同僚のハーレド(アリ・スリマン)は相手の態度にキレてバンパーを壊し、工場をクビになる。幼馴染の親友同士の2人が、丘の上で水パイプを交互に呑みながら荒涼とした街並みを見下ろしている様子は、日本ならコンビニの前でしゃがみこんでダベっている若者そのものだ。サイードは寡黙で控えめ、ハーレドは短気な面はあるが明るい性格として描かれている。
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