フォーブスのリアルタイム・ビリオネア・トラッカーによると、現在66歳の孫の保有資産は、昨年5月に日本の富豪番付で3位にランクインした当時は209億ドルだったが、現在は288億ドル(約4兆3000億円)に増加している。アームの約90%を所有するソフトバンクグループも、2月8日の第3四半期決算で旺盛なAI需要を背景に強気な見通しを示したことにより、ナスダックに上場するアーム株の上昇に追随する勢いで株価を上昇させている。
アームのレネ・ハースCEOは、7日の決算説明会で「当社はAI分野から強い追い風とモメンタムを得ている。地球上で最も複雑なデバイスのトレーニングや推論など、ますます多くのAIのオペレーションが、エッジデバイスやエンドデバイスで実行されており、それらはすべてアームのチップで行われている」と述べていた。
孫が経営するソフトバンクグループは、2016年にアームを320億ドルで買収し、ロンドン証券取引所に上場していた同社を非公開にした。ジェンスン・フアンが率いるエヌビディアは、2020年に400億ドルでソフトバンクからアームを買収しようとしたが、米当局からの訴訟や欧州の競争当局からの調査を受けて、2022年に断念していた。アームは、昨年9月に米ナスダック市場に上場を果たし、2023年最大のIPOを記録していた。
世界最大のテクノロジー投資ファンドであるソフトバンクグループの株価も、8日の決算発表を受けて上昇した。同社の2023年10月~12月期の最終損益は、約64億ドルの黒字で、5四半期ぶりの黒字転換となった。同社は、投資先のバイトダンスの評価額の上昇や、ドアダッシュやオヨの株価の上昇からもリターンを得ている。
孫の投資先の企業には、WeWorkやFTXといった急成長後に崩壊したスタートアップが含まれているが、アームはその中でも輝かしいポジションを維持している。1981年に日本ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)を創業した孫は、コロナ禍の投資バブルが株価を押し上げた2021年に日本の富豪ランキングのトップに、3年ぶりに返り咲いていた。
テクノロジー分野の投資家として知られる孫は昨年4月に、アーリーステージに特化したファンドのソフトバンク・ベンチャーズ・アジアを、弟の孫泰蔵が所有するシンガポールの投資会社TheEdgeOf(エッジオブ)に売却した。現在はSBVAにリブランドされたソフトバンク・ベンチャーズ・アジアは、ハイテクを駆使した洗濯物宅配アプリのLifegoeson(ライフゴーズオン)やAI用いた港湾監視・管理システムのSeadronix(シードロニックス)などのスタートアップを支援している。この2社は、昨年のフォーブスのAsia 100 to Watch(アジアで注目すべき100社)に選ばれていた。
(forbes.com 原文)