2022年4月には岐阜県に本社がある浅野撚糸が工場を開設、2023年8月には町内唯一のコンビニがオープンした。
ただ、街を見渡すとまだまだ更地が目立つ状況だ。今の双葉町にはスーパーも通える学校もなく、元々約7000人いた住民のほとんどは戻っていない。かつて商店街だった場所には草が生い茂り、小学校は“あの日”のままの状態で残されている。
“人がいない”という、被災地の中でも特殊な環境での街づくりをどのように進めるべきか──。クリエイターの力を借りて考えようと、双葉町とコンテンツスタジオのCHOCOLATE Inc.などが共同で、「Draw in FUTABA」プロジェクトを立ち上げた。
双葉町産業交流センターの屋上から見た双葉町中心部(筆者撮影)
「始めよう」とするエネルギーがある街
「Draw in FUTABA」は、経済産業省が2022年7月に発表した、双葉町を含む福島県の太平洋側エリアの復興に向けた「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」の一環。経済産業省は、その狙いについて「芸術を介して多くの方々が集い、地域と関わり、地元の方も新たな自信と誇りを持てるような取り組みを推進したい」と説明する。アーティストやクリエイターを呼ぶことで、帰還者、新たな住民、定期的な来訪者とハーモナイズする形で、作品の制作・発表を進めようとしている。
双葉町では「Draw in FUTABA」の活動を通して、クリエイターや企業などの関係人口の創出を図り、被災地全体を盛り上げていく。その第一弾として、2023年10月19日からの2日間、クリエイターらが双葉町でできることを描き、実現を目指す「Futaba Drawing Camp」が行われた。
このキャンプの企画者のひとりでDraw in FUTABAメンバーの栗林和明(CHOCOLATE チーフコンテンツオフィサー)は、双葉町の印象について次のように語る。
「2023年6月に初めて双葉町を訪れたのですが、帰還した地元の方や震災後に移り住んできた方ともお話して、新しく何かを始めようとしている人たちのエネルギーを肌で感じたんです。そういう場所にクリエイターや企業が集まって、住民の皆さんと一緒に構想を描きながら新しい街をつくることができれば、ものすごく希望にあふれることだなと思いました」
(左から)双葉町復興推進課の藤澤槙吾、Draw in FUTABAメンバーの栗林和明、経済産業省 福島浜通り映像・芸術文化若手チームの髙橋拓磨