スタートアップ

2024.02.22 08:30

日本のスタートアップの未来のために解雇規制を見直してはどうか

日本への投資にコミットする投資家として、私は日本の未来、特にスタートアップ界の未来について非常に明るい展望を持ち続けています。

その理由の1つが政府の「スタートアップ5か年計画」です。豊かなスタートアップ環境の醸成に向けた強力な支援や明確なビジョンを掲げる同計画は、日本の未来を切り拓く大胆で素晴らしい一歩です。

Coral Capitalもこの発展に積極的に貢献するために、日本がスタートアップ企業にとって活気ある市場となるよう支援して参ります。

しかし、このような前進がある一方で、日本のスタートアップ政策においてまだ取り組みが進んでいない重要な領域が1つあります。それは雇用に関する厳しい法規制の緩和に向けた改革です。

長年の雇用モデルとして日本の企業文化を形作ってきた「終身雇用」は、世界でも類を見ない雇用の安定をこれまで提供してきました。当初は熟練労働者の確保を目的に大企業で採用されていた制度でしたが、第2次世界大戦後の好景気とともに日本中に浸透しました。そして、一度就職すれば定年までその企業での雇用が約束されることが暗黙の了解となっていったわけです。

終身雇用がメリットになる場合もある一方で、スタートアップにとってはその成長に不可欠な流動性やダイナミズムを妨げる過度な制約となっています。

スタートアップではリソースが限られていることが多く、チームメンバー1人ひとりの影響力が非常に大きいという特徴があります。こうした企業にとって、日本の厳しい解雇規制は特に大きな障壁となります。スタートアップ企業には急速に進化するための柔軟性が不可欠で、会社の成長やニーズの変化に合わせてチームも変えていかなければなりません。

例えば10人しかいない会社に入社したはずが、2年も経たないうちに100人規模になっていたということもスタートアップではあり得るのです。

このような急成長を遂げる企業では、会社としての本質が変わるだけでなく、求められるスキルセットも変化します。しかし、現在の法的枠組みにおいてはスタートアップがアジリティを発揮することが難しく、会社の方向性とスキルが合わなくなったメンバーがいてもなかなか変えられないのが現状です。

Coral Capitalも、投資先の人材戦略の支援に深く携わる中で、こうした雇用の課題に取り組んできました。例えば会社の特定の成長段階において抜群に優秀な活躍ができる社員がいれば、そのスキルをより発揮できるような成長段階の企業への転職をサポートするなど、人材が企業間で流動的に移動できるよう支援しています。こうした支援に需要があるのも、スタートアップが人材の流動性を求めているにもかかわらず、現在の解雇規制等がその妨げとなっているからです。
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文=James Riney

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