経済・社会

2024.02.22 13:30

産業革命前夜の大転換で「NEW WORLD」を牽引せよ!

ドイツのメルセデス・ベンツ工場に新設された組立ライン「ファクトリー56」。AIやビッグデータ分析、予測的メンテナ ンス、5G、VRが導入された最新鋭のスマート工場だ。

Forbes JAPAN2月号は、「『地球の希望』総予測」特集。戦争、気候変動、インフレなど、世界を揺るがすさまざまな事象が起きる「危機と混迷の時代」。2024年の世界と日本の経済はどうなるのか? 世界で活躍する96賢人に「今話したいキーワード」と未来の希望について聞いた。

AIとの共生時代。デジタルを根幹としたビジネスモデルへの転換が不可欠だ。「10年遅れ」と言われる日本企業に必要な処方箋と成功例は? ガートナージャパンの亦賀忠明が解説する。


Chat GPTに代表される生成AIに対する関心は、2024年以降もさらに高まるだろう。ガートナージャパンの亦賀忠明によると、日本の企業が、今こそ、時代変化を見据え、AIとの共生時代に対応できるテクノロジーカンパニーとして生まれ変わる時だという。

昨今は主要な業界で、デジタルが前提のビジネスモデルへの転換が進んでいる。これは、従来からある「ITを業務に活用」というレベルの話ではなく、その産業自体が、デジタルが前提の産業になるという話である。すなわち、これは、新たな産業革命の時代といっても過言ではない。いくつかの海外企業の好例がある。

ドイツを拠点とする自動車メーカーのBMWは、AIやメタバースにも関わる先進半導体を得意とする米NVIDIAの仮想空間プラットフォーム「オムニバース」を導入。EV生産の効率化を仮想空間の中でシミュレーションする、デジタルツインの構築を進めている。米金融大手であるJ.P.モルガンは23年にも2兆円規模の大がかりなテクノロジーへの投資を行い、サイバーセキュリティやAIに関わるプラットフォームの強化を推進した。

こうした企業のある共通点は、10年以上前からテクノロジーカンパニーとしての転換を図り、築いた土台の上に昨今の「AIテクノロジーを足して」イノベーションの加速を呼び込んでいることだ。今までの文脈の中で柔軟に適応した上で、今後は生成AI、クラウド、ビッグデータなどスーパーパワーを活用しながらレベルアップを加速する段階に来ている。従来の「これでいくら儲かるのか?」といった近視眼的な考え方から、2025年、2030年以降の生き残りをかけた戦略的なマインドセットに転換すべきだ。

企業において、産業革命クラスの大変化への対応をリードする舵取り役として、組織の中に「チーフ産業革命オフィサー(CIRO)」を置くことの重要性を亦賀は説く。CIROが果たすべき役割とは、CEOが打ち立てた企業の中長期的戦略に沿って「デジタルを前提とした企業への再定義」を前に進めることだ。

産業革命的な時代には、企業の強みになるデジタルテクノロジーを創り出せる人材、すなわち「クリエーター的エンジニア」が不可欠だ。組織のリーダーはこのような人材が活躍できる体制とカルチャーを醸成することにも目を向けなければならない。

全般的に、従来のやり方を継続している企業は多いが、日本でも、産業革命クラスの時代変化に対応すべく積極的な取り組みをしている企業も存在する。24年は、生成AIやこうした企業に触発される形で、産業革命への対応を加速する企業が増えてくるだろう。

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文=山本 敦

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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