ウクライナは近々、およそ1年ぶりに都市を失陥する方向にある。ウクライナ軍にとって手痛い敗北になるだろう。もっとも、ロシア軍の勝利はそれよりもはるかに大きな痛みを伴ったものになりそうだ。たとえば戦車の損失だ。破壊され、住む人もほとんどいない数平方kmのアウジーイウカ市街地を占領するために、ロシア軍は1個機械化師団分に相当する戦車を失っている。
Suyi控(@partisan_oleg)というOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストが述べているとおり、旧ソ連軍では1万人規模の自動車化狙撃師団に、少なくとも書類上は戦車が220両配備されていた。現在のロシア軍はソ連の戦力設計をおおむね踏襲する。
別のアナリストNaalsio(@naalsio26)の集計によれば、昨年10月上旬にアウジーイウカ方面の攻撃を開始したロシア軍の第2、第41両諸兵科連合軍は、これまでに214両にのぼる戦車を失っている。T-72やT-80が大半を占めるが、高性能なT-90も数両含まれる。一方、ウクライナ側のアウジーイウカ周辺での戦車損失数は18両にとどまる。
ロシア軍はアウジーイウカ周辺だけで、ウクライナに送り込んだ戦車全体の10分の1超を失った可能性がある。
ロシア側は戦車の損失がウクライナ側の12倍にのぼっていることに関して、ウクライナ側がアウジーイウカ防衛戦に戦車を投入しなかったからだと主張することはできない。ウクライナ側も、自軍最高の戦車であるドイツ製レオパルト2A6を含め戦車を戦闘で使用しているからだ。ただ、レオパルト2A6はのちに、アウジーイウカの北80kmほどに位置する都市クレミンナ周辺を守備する旅団に譲渡されている。
ロシア側はまた、ウクライナ側に比べて偏って大きな戦車の損失を、伝統的に攻撃側よりも防御側のほうが損害は少ないという論理で説明することもできない。相手に身をさらす攻撃側よりも壕に身を隠す防御側に優位性があるとはいっても、歴史的に防御側と攻撃側の損耗比率はせいぜい1対3程度だからだ。