欧州

2024.02.13 09:00

ロシア軍「アウジーイウカ攻略」でも代償大きく ウクライナ投入戦車の1割損失

ロシア側の戦車の損失が積み上がったのは、単純にウクライナ軍が、地雷や野砲、ドローン(無人機)、ミサイル、あるいは塹壕からの昔ながらのロケット砲などによって、ロシア軍の部隊を打ち負かしてきたからだ。ウクライナ側は、米国からの援助が昨年10月から議会共和党によって断たれ、弾薬が減ってくるなかでも、そうし続けた。

ロシア側は想定される4倍もの損害を戦車に出し、消耗の罠にはまった。ロシア軍はアウジーイウカを占領するかもしれない。だが、ウクライナ軍の守備隊がいま撤退すれば、ロシア側は、おそらくすぐには補充できないほどの甚大な人員・装備の損害と引き換えに、廃墟を得たという結果になるだろう。

また、ロシア軍はアウジーイウカ攻略への注力によって、ロシアがウクライナで拡大して2年近く経つ戦争の約1000kmにわたる戦線のほかの方面では、作戦ペースを落とさざるを得なくなっているとみられる。

問題は、アウジーイウカの守備隊が撤退しない可能性もあることだ。ウクライナ軍の東部コマンド(統合司令部)、あるいは新たに任命されたオレクサンドル・シルスキー総司令官が、守備隊に最後の一兵まで戦うように命じれば、ウクライナ側は消耗面での優位性を失うおそれがある。

これは以前、実際に起きたことだ。昨年5月にドネツク州バフムートがロシア軍に両翼包囲されたとき、当時、陸軍司令官だったシルスキーはおそらく、廃墟と化したこの都市に守備隊を長く留め置きすぎた。

ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは「バフムートでは当初、ウクライナ側が成功し、ロシア側は大きな損耗を被り、ウクライナ側とロシア側の損耗比率が1対7ないし1対10に達していた時期もあった。だが、状況は急激に変わった」と説明する。「ロシア側がウクライナ側の両翼の制圧にこぎ着け、補給ルートを妨害し出すと、損耗比率はほぼ同等になった」

現時点では、ロシア側がアウジーイウカ攻防戦に「勝利」しても、ウクライナ側よりも格段に大きな痛みを負った結果にするのに遅くない。一方でウクライナ側が敗北から勝利をもぎ取るには、撤退のタイミングを見極める必要がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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