政治

2024.02.13

殺人犯を釈放し、政治犯を投獄 ソビエト時代に逆戻りするロシア

英作家ジョージ・オーウェルがソビエト社会をモデルに描いた小説『1984年』(Getty Images)

ロシアでは、効果のある方法で戦争や政府を批判することは、ほぼできなくなっている。野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイやジャーナリストのウラジーミル・カラムルザに与えられた極端で異常な刑罰が、それを証明している。

米紙ワシントン・ポストのコラムニストであるカラムルザは米国の永住権を持ち、2度の毒殺未遂事件を生き延びた。ロシアの裁判所は、ウクライナ侵攻に関する演説を行ったとして、国家反逆罪でカラムルザに懲役刑を言い渡した。妻のエブゲニア・カラムルザはロシア独立系メディア「メドゥーザ」のインタビューで、夫に科された刑罰に対する不満を表し「過酷な判決」による拷問や「懲罰的な精神治療」が国に戻ってきたと訴えた。

ロシア政府は2020年、プーチン大統領に対する批判運動を展開するアレクセイ・ナワリヌイの毒殺を試みたが未遂に終わり、ドイツでの救命治療を終えて帰国したナワリヌイを投獄した。一連の訴追により、ナワリヌイは事実上の終身刑を言い渡されている。

政治学を専門とし、『The Code of Putinism(プーチン主義法典)』の著者である米シラキュース大学のブライアン・D・テーラー教授は、ロシアに真の選挙がないのは、選挙時の操作のためだけでなく、野党の政治家や活動家、独立系ジャーナリストであることが基本的に違法になったからだと指摘する。

ジョージ・オーウェルの『1984年』を体現するロシア

英国の作家ジョージ・オーウェルは、ソビエト社会をモデルに小説『1984年』を執筆した。現代のロシアは、オーウェルがこの有名な作品を書くきっかけとなった多くの慣習を取り戻しつつある。ソ連出身の作家マーシャ・カルプは著書『George Orwell and Russia(ジョージ・オーウェルとロシア)』の中で、この現象について取り上げている。

ロシアの政治犯たちは、プーチン政権のオーウェル的性質を認識している。政治犯オレク・オルロフは昨年10月、法廷で裁判官に問い掛けた。「つまり『戦争は平和』であり、『自由は奴隷』であり、『ロシア軍は国際的な平和と安全を守るためにウクライナに駐留している』のだ。裁判官の皆さん、私もあなた方も、私たち全員がジョージ・オーウェルの小説『1984年』の世界に生きていることは、あまりにも明白ではないだろうか?」

裁判所は、2022年にノーベル平和賞を受賞した人権団体メモリアルの創設者であるオルロフに有罪判決を下し、罰金を科した。オルロフは訴えた。「何という時代の逆戻りだろう! 実際の歴史では、1984年はソ連で変化が始まった年だと証明されている。ペレストロイカ(再建)、そしてそれに続く1991年の民主革命——その時、変化は不可逆的なものに見えた。ところがそれから30年余りが過ぎ、私たちは突然1984年に逆戻りしてしまった」

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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