欧州

2024.02.11 09:30

橋頭堡のウクライナ部隊がドローンで国旗掲揚 危険極まりない戦場で抗戦続ける

遠藤宗生
とはいえ、橋頭堡の海兵隊員や、補給するボートの乗員らにとって、状況が危険極まりないのも事実だ。クリンキ以外、ドニプロ川左岸の全域を支配しているロシア軍は、これまでにウクライナのボートを何十隻も沈め、搭乗者を大勢死亡させてきた。ウクライナ側の陣地に対しても、爆撃機から滑空爆弾で容赦のない攻撃を加えた。爆撃は昨年12月、ロシア空軍のスホーイSu-34戦闘爆撃機3機が一気に撃墜されたことで、少なくとも一時的には鈍化している。

クリンキにいる海兵隊員の数は200〜300人程度かもしれない。いずれにせよ、彼らははるかに大規模なロシアの軍勢を相手にしている。ロシア側の兵力は1個空挺師団、1個自動車化師団、2個海軍歩兵旅団の部隊からなる総勢数万人だ。「われわれの防衛者たちはそこ(クリンキ)で非常に大きな圧力にさらされている」と、「Kriegsforscher」というハンドルネームでソーシャルメディアに投稿しているウクライナ軍のドローン操縦士は説明している

それでも、海兵隊部隊ははるかに規模の大きな敵軍に対して持ちこたえているばかりか、少しずつではあるものの橋頭堡を拡大してさえいる。これは彼らの勇敢さと強靭さ、そしてウクライナ側が小型ドローンの運用と電子戦で優位にあることを証明するものである。

クリンキ周辺の上空で活動するウクライナ側のドローンには、爆薬を積んだ重量1kgほどのFPV(一人称視点)ドローンや、より大型で、1度の任務で合計15kg弱の複数の擲弾(てきだん)を投下できる再利用可能なヘキサコプター(回転翼が6つのドローン)がある。「バーバ・ヤハ」と呼ばれる後者のドローンは夜間に徘徊(はいかい)している。

これらのドローンによって、ロシア軍がクリンキの橋頭堡に近づくのは昼夜を問わずほぼ不可能になっている。また、ロシア側のドローンはウクライナ側のジャミング(電波妨害)を克服するのに苦戦している。

ウクライナ軍は左岸へ補給物資を送るのにもドローンを用いている。ただし、1機のドローンに積載できる量は1kg前後と少ない。Kriegsforscherによると、クリンキに向けて飛ばしているドローンの大半は兵站(へいたん)のためだという。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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