テクノロジーの進歩と人類の希望
──『ザ・セカンド・マシン・エイジ』第6章には、コンピュータ技術の指数関数的高性能化と大量の情報のデジタル化、組み合わせ型イノベーションの増加によって、「真の意味で有用な人工知能(AI)」が出現し、「地球上の多くの人々がデジタル・ネットワークを介してつながる」と書かれています。原著刊行から約10年。生成AIの誕生など、まさに予測通りになりました。一方で、AIの規制や倫理など、新たな問題も浮上しています。
マカフィー:エリックと私は拙著でAIについて論じたが、その進化の速さを過小評価していた。生成AIには心底驚いた。人間の言葉を理解し要求に応えてくれる生成AIが、これほど早く実現するとは。
一方、パワフルなテクノロジーにリスクが伴うのは確かだ。しかし、最初から問題が起こらないよう、性急に規制すべきとは思わない。まずはイノベーターが自由にテクノロジーを発明し、明らかな弊害が見つかったら、政府が素早く制約を設けるか、中止させればいい。これを 「permissionless innovation(許可不要のイノベーション)」という。
生成AIという極めてパワフルなテクノロジーへのアクセスを民主化すると、偽情報など、悪用のリスクが生じる。だが、悪用を恐れてアクセスを封じるのはまずい。難しいことだが、信頼できる情報か否かを判断する方法を見つけ出す必要がある。
──分断やデジタル格差を乗り越えて持続可能な世界を築くには、どうすればいいのでしょう?
マカフィー:温室効果ガスなどのさらなる規制は素晴らしい考えだが、私たちは、もう地球に負担をかけない方向へと向かっている。依然としてテクノロジー格差は甚大だが、この10年間は大幅に縮小している。いまやインターネットさえあれば、世界のどこにいても、低所得層の人々でも、とてつもなくパワフルなAIに無料でアクセスできる。
──『The Geek Way』によると、大成功を収めているシリコンバレーの企業は、テクノロジーの発明だけでなく、そのスピードや開放性など、経営の仕方自体を変え、新たな企業文化を生み出しているそうですね。なぜ、同書を書こうと思ったのですか。
マカフィー:米宇宙開発企業スペースXや米動画配信大手ネットフリックスなど、比較的小規模な事業体としてスタートし、短い年数で並外れた業績を達成した企業には、いずれもパワフルな経営哲学がある。それを理解したいと思ったのが、執筆動機だ。
スペースXやネットフリックスのような企業はどうやって多くの偉業を成し遂げたのか。なぜ今後、そのような企業が増え、既存業界を「破壊」していくのか。書籍では、こうした点を分析している。