テクノロジー

2024.02.21 13:30

地球の負担減らす「モア・フロム・レス」「善きテクノロジー史」を導く次の一手

企業がイノベーションを起こすには?

──ノーベル賞受賞経済学者のポール・ローマー教授についても書いていますね。同教授は「内生的成長理論」で技術革新の重要性を説き、企業は利益を求めて自社でテクノロジーを開発すべきだと主張しています。企業が利潤追求のために発明するテクノロジーには、「非競合性」と「部分的な排除性」という2つの特性がある、と。

マカフィー:「非競合性」とは、他者も使えるという意味だ。使い果たされるものは「競合財」だが、ピタゴラスの定理など、アイデアは何度でも使える。次に「部分的な排除性」とは、自社のアイデアを特許化などで一定期間、他者から守ることはできるが、永遠に独占することは不可能であり、いつかは誰かに使われてしまうという意味だ。

ローマーによれば、企業発のテクノロジーには上記の特性があるからこそ、企業には、優れたアイデアを生み出して、一定期間、それで稼ごうという動機が生まれる。それが成長の源になるわけだ。

──企業が2つの特性を生かしてイノベーションを起こすには? 政府は何をすべきでしょうか。

マカフィー:最も革新的な企業を手本にして、なぜ、そうした企業が迅速に物事を進められるのかを理解すべきだ。新刊『The Geek Way(ギーク・ウェー)』で書いたが、成功している企業の創業者や起業家は、より良い経営法を見いだしていた。素早い改善とイノベーション、高レベルの効率性、急速な生産性の伸び。こうした強みゆえ、好ましい方向に向かって、実に素早く効率的に物事を進めることができる。

一方、政府の主な役割は、企業の投資が十分でない基礎研究に資金を提供することだ。政府は、大学への財政支援など、重要な役割を担っている。政府の基礎研究支援は、優れたアイデアのプロセス化や、企業によるアイデアの商業化を後押しする。

こうした基礎的イノベーションでは、政府と企業の協働が重要な役割を果たす。政府は、企業がアイデアを商業化して市場に送り出せるよう、適切な法律や枠組みをつくるという役割も担っている。

──エリック・ブリニョルフソン教授との共著『ザ・セカンド・マシン・エイジ』(日経BP、村井章子・訳)にも、ローマー教授が登場します。同教授は、組み合わせ型イノベーションを重視していると。

マカフィー:イノベーションは「レゴ」と同じだ。ブロックを組み立て、見たこともないような形のオブジェをつくる。ブロック、つまりアイデアは、すでにたくさんある。それを組み立て、新しい何かをつくり上げるのが「組み合わせ型イノベーション」だ。
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インタビュー =肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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