アジア

2024.02.09 10:00

中国、国有企業に海外資金を引き揚げ同国株の購入を命じている可能性

安井克至
これは問題の始まりに過ぎなかった。不動産価値の下落は家計の純資産を大きく目減りさせたため、消費者は支出を控えるようになった。同時に、外国企業がサプライチェーンの多様化を求め、外国政府(特に米国、欧州連合、日本)が中国との貿易を敬遠するようになったため、中国の輸出は苦境に立たされている。

これだけでも十分だが、中国政府は安全保障に執着するあまりに企業の事業運営に徹底的に介入するようになり、外国企業の対中投資は減少している。政府の中央集権的な統制への執着により、国内の民間企業の投資も伸び悩んでいる。

こうしたことから、中国の株価が低迷しているのはさほど不思議なことではない。政府がこうした問題を解決しようとさえしていないことも、中国経済が2桁近い成長率を示し、楽観的に構えていられた頃のようなバリュエーションがなくなった理由だ。

経済と金融がこうした根本的な問題を抱えていることから、政府の株購入の措置では永続的な効果は得られない。噂が正しいとすれば、物議を醸すには十分な規模だ。噂されている額は、発行済み株式の総額の約8%に相当する。だが、政府がもっと根本的な問題を改善するための説得力のある措置を講じない限り、株価は株購入の措置が終了するとすぐに再び下落するだろう。中国が2015年にこのような無謀な戦略をとったときは、買い入れ措置が終了する前から株価が下落し始めた。

中国株への投資を考えている投資家にとっては危険な状況だ。この公的買い入れによって株価が上昇すれば、多くの投資家はそれに乗じて儲けようと買いを入れるだろう。だが、根本的な解決策がなければ、その後すぐさま株価は下落する可能性が高く、公的買い入れ措置は失敗し、便乗していた投資家も打撃を受けることになる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事