吉永氏は「これがきちんとできないと、軍隊ではなく、野蛮な武装集団という扱いになります。逆に礼式が徹底していれば、侮れない相手だという印象を与えることができます。これも立派な抑止力と言えます」と語る。自衛隊や米軍がみな、しわ一つない制服を着て、靴をピカピカに磨き上げているのも、「侮れない相手だから、戦わない方が良さそうだ」だと思わせるための大事な演出だ。
当然、相手はロシアだろうが、中国だろうが関係ない。吉永氏は「戦うかもしれない相手でも、平時にはお互いを尊重するというのが、軍の常識です」と語る。同氏が現役時代、自衛隊と中国軍の親善交流が行われた。訪日した中国軍関係者は歓迎式典の際、掲揚された日の丸に対して当然のように敬礼していたという。
吉永氏は「まあ、だからこそ、2018年秋にあった韓国政府による自衛艦旗(旭日旗)掲揚拒否事件は、自衛隊にとっては大きなショックだったんです。当時の自衛隊幹部はみな、あきれた表情でした。韓国軍関係者も内心では恥ずかしかったと思いますよ」と語る。海上自衛隊と韓国海軍は5年以上経った今も、この事件と、同年12月にあった海自哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件を巡る後遺症に悩まされている。すでに、陸自と空自は韓国陸軍・韓国空軍との間で、それぞれ個別の交流を再開したが、海自だけは韓国海軍との2国間交流を再開できていない。
日本と韓国周辺の安全保障環境が不穏な今、韓国政府と韓国海軍の一歩踏み込んだ決断が待たれる。
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