米国神経学会(ANN)の学術誌「Neurology」に掲載された研究によると、勃起不全治療薬を処方された被験者は、処方されなかった被験者に比べて、アルツハイマー病と診断される可能性が18%低かった。この研究は、認知症や認知混濁の診断歴のない平均年齢59歳の男性26万9725人を5年間追跡調査したもので、被験者の55%がバイアグラやシアリスなどの勃起不全治療薬を処方され、45%は処方されなかった。これらの薬剤は、ホスホジエステラーゼ5阻害剤(PDE5I)と呼ばれ、高血圧や勃起不全の治療に使用されている。
PDE5Iの成分の一部は、脳への血流を増加させ、ニューロン(脳を構成する神経細胞)が脳内で消費するエネルギー量を減少させることにより、脳の健康を改善する効果を持つとされている。このため、研究チームは、この薬剤がアルツハイマー病のリスクを低下させると考えている。
米国立老化研究所が支援した2021年の研究でも、糖尿病や高血圧を患う高齢男性のアルツハイマー病の発症リスクを、バイアグラが69%低下させたことが指摘されていた。
「初期のアルツハイマー病患者の間では、この病気の発症を予防したり遅らせたりするための治療法が切実に求められている」と、論文の著者でユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの講師を務めるルース・ブラウアーは声明の中で述べている。
2022年に米国国立衛生研究所(NIH)が支援した同様の研究では、バイアグラやシアリスを治療のために投与された高血圧患者と、別の種類の高血圧治療薬を投与された高血圧患者という2つのグループを対象に、5カ月間の追跡調査を行ったが、この時はその結果から、バイアグラやシアリスがアルツハイマー病のリスクを減少させる効果は確認できないとされた。今回の論文の研究者たちは、NIHの研究について「5カ月間という期間では、目的とする結果を得るには短すぎたかもしれない」と声明の中で述べている。
一方、鼻をほじるとアルツハイマー病の発症リスクが高まる可能性が、昨年10月に論文プラットフォームのMDPIに掲載された研究結果で指摘されていた。慢性的な鼻ほじりは、汚れた指を経由して鼻の中に細菌やその他の病原体を持ち込むことにつながり、アルツハイマー病の原因と考えられているベータアミロイドというタンパク質が、鼻の中の細菌に反応して脳内で生成されるという。そのため、研究者たちは、「鼻をほじることで得られる一時的な安心感は、適切な鼻腔衛生の代用にはならないことに注意することが肝要だ」と述べている。
(forbes.com 原文)