米政府が「スパイウェア」関係者のビザを制限、投資家も対象

ブリンケン国務長官(Photo by Alex Wong/Getty Images)

米国政府は2月5日、商用スパイウェアの開発業者を取り締まるために、その悪用に関与する個人を対象にビザ(査証)に制限を科す方針を明らかにした。

ブリンケン国務長官は、この制限が商用スパイウェアの悪用が世界中で拡大していることを受けてのものだと説明した。ここ数年で、少なくとも50人の米政府関係者がスパイウエアの標的になったとされている。

この新たな制限は、移民法212条に基づくもので、ジャーナリストや政治家、人権活動家を含む人々を標的とし「彼らを違法に監視し、嫌がらせをし、弾圧し、あるいは脅迫する」ための商用スパイウェアの悪用に関与した人物やその家族に適用される。

また、商業スパイウェアを供給する企業を支援する投資家も、配偶者や子どもなどの家族とともに影響を受ける可能性があるという。

「米国は人権と基本的自由の側に立ち、商用スパイウェアの悪用に関与した個人に責任をとらせる動きを引き続き推進していく」とブリンケン国務長官は述べている。

この措置は、商業用スパイウェアの販売に関与したことで知られるヨルダンやイスラエル、インドといった国の国民に影響を与えそうだ。たとえば、イスラエルに本拠を置くNSOグループは、ヨルダン政府が反体制派の監視に使用しているスパイウェア「ペガサス」を開発したことで、すでに米商務省のブラックリストに入っている。

商用スパイウェアはまた、プーチン政権やウクライナ戦争に批判的なロシア発祥のメディアに対しても使用されていると考えられている。現在、米国のブラックリストに掲載されている他の企業としては、Cyrtox社、Intellexa社、Candiru社などが挙げられる。

米国は以前から商用スパイウェアに懸念を抱いており、昨年3月には、米国の国家安全保障や外交政策上の利益に危険を及ぼす商用スパイウェアを政府が使用することを禁止する大統領令を出していた。

今回の発表は、グーグルの脅威分析グループ(Threat Analysis Group)が商用スパイウェアに関する報告書を発表し、世界中に数十のベンダーが存在することを明らかにしたことを受けて行なわれた。

「スパイウェアは通常、ジャーナリストや人権擁護者、反体制派、野党の政治家など、体制側にとってリスクの高いユーザーを監視し、データを収集するために使用される」とグーグルの同グループのシェーン・ハントリーは述べている。

「スパイウェア技術への需要は、政府や悪質な行為者の間で拡大しており、儲かる産業への道を開いている」とハントリーは付け加えた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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