世界経済フォーラムの第54回年次総会(通称「ダボス会議」)開催3日目には記者会見を開き、マニュライフ生命やサウジアラビア王国など幅広いパートナーから27年までの活動資金として3700万スイスフラン(約63億円)を確保したと発表。世界が直面する課題の解決に取り組むインパクト社会起業家へのサポートを拡大すると宣言した。
日本を含め、世界には多くのスタートアップ育成・支援プログラムがある。だが、それらすべてが成功しているとは言い難い。アップリンクのイノベーション・エコシステムが短期間で軌道に乗りインパクトを創出できているのはなぜか。トップ・イノベーターの取材から見えてきたのは、課題と目的を共有し、ともに学び合い活かし合う場とつながりの大切さだ。
可能性を信じることから革新は生まれる
1月16日の午前9時30分。「ダボス会議」のメーン会場からほど近い高校のホールには平日にもかかわらず大勢の人たちが集まっていた。来場者にはショート丈のダウンコートを羽織った高校生や、ローカルコミュニティの住民と思われる人たちの姿が目立つ。彼らが集まった理由。それは世界経済フォーラムが主催する「オープン・フォーラム」に参加するためだ。オープン・フォーラムは一般の人々に無料公開されるイベント形式のセッションだ。この日のタイトルは「テクノロジーで深呼吸しよう」(Take a Deep Breath with Technology)。気候変動と大気汚染に対処するための革新的な方法について5人のパネリストとともに考えるというものだった。
登壇者のひとりが、ウガンダを拠点にエネルギー事業を手掛けるマンドゥリス・エナジー共同設立者兼マネージング・ディレクターでありトップ・イノベーターのピーター・ベンハー・ニーコだった。マンドュリス・エナジーは廃棄物から生成したエネルギーを手頃な価格で提供する企業だ。AIとブロックチェーンを用いた独自のデジタル・プラットフォームで配電や販売を管理する。
気候変動対策について聞かれたニーコは「問題だけに焦点を当てると難題のように思えることがある。しかし解決策はある。そのことを私たちが理解している限りイノベーションは存在する。(経済性、社会性、人々の暮らしの質の向上を)ウィン・ウィン・ウィンにすることも可能だ」と話し、イノベーションの力を信じることの重要性を説いた。