とはいえ、激しさはサッカーを構成する1つの要素であることは変わらない。
ドゥンガはこう付け加えた。
「暴力的に仕掛けてくる相手に対しては怯まないこと、そして怒って余計なカードを貰わないことだ」
森保監督の采配には多数の疑問
日本代表はどうだったか。前半23分、右サイドの久保建英がペナルティエリア近くまでボールを持ち込んだ。しかし、イラン代表の選手たちに囲まれて奪われてしまう。そしてモヘビへ速いパスが入った。するとセンターバックの1人、板倉滉が身体をぶつけた。これでイエローカードを貰うことになった。
直後の前半28分に日本代表は守田のゴールで先制している。これは守田の個人技であって、イラン代表の守備を崩したのではない。事故のような得点だった。
その後、イラン代表は、したたかに日本代表を仕留めに来た。ターゲットはセンターバックだった。
もともと、板倉の調子は良くなかった。そして、もう1枚イエローカードを貰えば退場。イラン代表は板倉の心を見透かしたように次々と前線にボールを入れた。
同点に追いつかれ、そして逆転されるのは必然だった。
なぜ板倉を先発させたのか。そしてあれほど狙われたのにどうして使い続けたのか。1失点直後に三苫薫、南野拓実という攻撃的な選手を2人も入れることは正しかったのか。そもそもどのような形で攻撃を組み立て、イランの守備陣を崩すつもりだったのか。いつものように森保一監督の采配には多数の疑問がある。
アジアカップ前、メディアは史上最強の日本代表、優勝候補の筆頭と持ち上げた。確かに選手は揃っている。しかし、クラブで見せている彼らの持ち味を生かすことはできなかった。
監督の能力、選手の勝利への渇望、気迫、ずる賢さ──。すべてイラン代表が上回っていた。日本代表に勝つ要素はなかった。負けるべくして負けた。
日本代表は、強豪国にはそれなりの試合ができるようになった。しかし、中堅国以下に対しては脆い。これまでも上位進出を期待されて望んだワールドカップではそれらの国に惨敗してきた。一方、危機感のあった大会はまずまずの結果を残している。
そこから導かれるのは、日本代表は弱くはないが、それほど強くもないという現実だ。アジアカップはそのことを突きつけられた大会となった。