メタによって設立され、外部の専門家によって運営されているフェイスブック監督委員会は昨年10月、バイデン大統領が孫娘の胸を触っているかのよう見える動画の調査を開始した。この動画は、実際には大統領が孫娘のシャツに「I Voted(投票済み)」のステッカーを貼り付ける場面を撮影したものだが、あるユーザーがそれを意図的に加工してフェイスブックに投稿していた。
メタは「加工されたメディア」に関するポリシーで、ディープフェイクなどのコンテンツの投稿を禁止しているが、その対象を「AIによって生成された動画や、被写体となった人物が実際には言っていないセリフを言わせているもの」と規定している。そのため、今回のバイデン大統領の動画は「AIを用いておらず、発言そのものは加工していない」という理由で、現状のポリシーには違反していないと監督委員会は判断した。
同委員会は5日の報告書の中で、メタに対しこのポリシーを早急に見直すよう促し、このようなコンテンツに関する「単一の統合された規準」を作ることを求めている。また、既存のポリシーの適用範囲を拡大して、それが「AIで作成されたかどうかに関わらず」、音声や画像の投稿を禁止対象に含めるよう要求した。
さらに、既存のポリシーに違反しないコンテンツの場合は、それを削除するのではなく、そのコンテンツが「著しく改変されており、誤解を招く可能性がある」といったラベル付けを始めるよう勧告した。
メタの広報担当者のCorey Chamblissはフォーブスに対し、同社が監督委員会の決定を検討中であり、60日以内に対応を行うと述べている。ホワイトハウスとバイデン陣営は、フォーブスのコメント要請に即座に応じなかった。
「当委員会は、メタの『加工されたメディア』に関するポリシーが説得力に乏しく一貫性を欠いており、ユーザーを混乱させるものだと判断した。このポリシーは、防止しようとしている危害を明確に特定しておらず、再考されるべきだ」とフェイスブック監督委員会は述べている。
同委員会によると、バイデン大統領の7秒間の改変された動画は、2023年5月にフェイスブックに投稿され、あるユーザーがヘイトスピーチとしてメタに苦情を申し立てたが、同社の審査担当者は、この動画はポリシーに違反していないと判断した。その後、このユーザーはこの問題を監督委員会に訴えていた。
世界的「選挙イヤー」への対応
タイム誌によると、フェイスブックの監督委員会は2018年末の発足以来、選挙の誤情報に絡む多くの事柄を審査しており、そこにはメタが2021年1月6日に発生した議事堂襲撃事件を受けて、トランプ前大統領のフェイスブックとインスタグラムのアカウントを停止する決定を下したことが含まれている。今年は世界人口の半数が投票に向かう選挙イヤーとされており、多くのハイテク大手がAIコンテンツを監視する計画を詳しく説明している。フェイスブックやインンスタグラム、スレッズ、WhatsAppを傘下に持つメタは昨年11月、2024年のさまざまな選挙を通じて従来の慣行を維持すると宣言し、AIで生成された広告にラベル付けを開始すると発表した。
(forbes.com 原文)