1980年代にIANA (Internet Assigned Numbers Authority)が地理的名称に関連する2文字のドメイン名を割り当てた際、アンギラは幸運にも「.ai」というドメインを取得した。この2年ほどで.aiドメインの登録数が急増し、島の経済を大いに活性化させている。
2022年11月にChatGPTがリリースされたことをきっかけに.aiドメインのブームが沸き起こった。アンギラ政府のためにドメイン登録の管理を行っているビンス・ケイトは、IEEE Spectrum誌に対して次のように述べている。「ChatGPTがリースされて5カ月で政府収入は4倍となり、今もその水準で横ばいとなっている。政府予算の約3分の1をドメイン登録が占めており、非常にワイルドな状況だ」
ケイトによると、アンギラは.aiの登録によって毎月約300万ドル(約4億4000万円)の収入を得ているという。彼は、今後ドメインが更新されるとこの金額は少なくとも2倍に増えると予測している。「ドメインの登録期間は2年なので、現在の収入はすべて新規登録によるものだ。現状、新規ドメイン登録だけで月間300万ドルを維持しており、1年後の更新時には月間600万ドルに跳ね上がるだろう」とケイトは話す。
英国の海外領土で、人口約1万6000人のアンギラの経済に、この収入は非常に大きな影響を及ぼしている。現状のドメイン登録の水準でも、1人当たりの収益は年間2250ドルに達する。アンギラの面積はわずか35平方マイル(約93平方キロ)で、国連貿易開発会議の推計によると、AIブームが始まる前の2020年のGDPは3億ドルだった。アンギラは、経済の大部分を観光、オフショア・バンキング、漁業に依存している。ケイトの予測通り登録件数が増え続ければ、2025年までにドメイン登録だけで7200万ドル(約107億円)をもたらすことになる。
2文字ドメインの恩恵を受けたのは、アンギラが初めてではない。ツバルも「.tv」のドメインによって恩恵を受けたことで有名だが、ケイトによると、両者ではドメインの管理方法に決定的な違いがあるという。
ツバルは長年、ベリサインやゴーダディなどのパートナー企業と提携して.tvドメインをライセンス供与してきたのに対し、アンギラは自前で登録を処理している。「我々は地元で対応しており、政府が収益のほぼ全額を得ているが、ツバルは収益の多くを手にしなかった」
アンギラの島民たちは、AIブームが短期的なバブルで終わらないことを誰よりも願っていることだろう。
(forbes.com 原文)