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2024.02.06 09:00

評価額1兆円の米「スケールAI」がTikTokとの提携を断念した舞台裏

政府との契約を「誇大宣伝」との批判

しかし、スケールAIが政府とのビジネスを拡大させる中で、連邦政府のリーダーたちは同社との取引に懸念を抱くようになった。3人の情報筋によると、軍関係者は2度にわたり、スケールAIが政府との取り組みを誇張して宣伝したとして、苦情を申し立てたという。

スケールAIは昨年、Donovan(ドノバン)と呼ばれる安全保障に特化したプラットフォームを発表した。この製品は、OpenAIのGPT-3.5のような大規模言語モデル(LLM)を機密情報に適応させるものだ。プレスリリースの中で同社は、ドノバンが陸軍第18空挺部隊の「重要なユースケース」に導入され「コーディングの経験を持たない軍のスタッフが、データを理解し整理するのを助ける」と主張していた。

しかし、このリリースが発表された後、同空挺部隊のジョー・オキャラハン大佐はスケールAIの幹部に対し、同社が提携の内容を誇張していると語ったと、複数の関係筋がフォーブスに述べている。また、スケールAIは当時、同部隊の任務命令書を与えられておらず、ドノバンは「重要なユースケース」の許可を得ていなかったという。この件に関してスケールAIのブレナンは「契約上の合意事項についてはコメントできない」と返答した。

一方、2人の情報筋によると、2023年後半現在で、ドノバンの使用例の大部分は試験的なものにとどまっており、スケールAIはそれらを本格的な契約に移行させるのに苦戦しているという。

物議を醸すProject Mavenとの契約

昨年フォーブスの表紙を飾り、2018年にはエンタープライズ・テック部門の「30 UNDER 30」の栄誉に輝いたワンは「政府との契約が容易な金儲けになることを期待していた」と3人の元従業員は語った。スケールAIは、2020年に国防総省と最初の契約を結んだが、政府調達の記録によると、契約の交渉はスムーズに進み、4年間で1億ドル前後の潜在的な利益が約束されていた。政府は、この契約でこれまでに8000万ドル近くを同社に支払っている。
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編集=上田裕資

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