スポーツ

2024.02.01

「ドーピング規制がない未来の五輪」団体にピーター・ティールが出資

ピーター・ティール(Photo by Marco Bello/Getty Images)

米決済企業PayPal(ペイパル)の共同創業者でビリオネアのピーター・ティールが「オリンピックの再発明」と称する「ドーピング規制がないスポーツコンテスト」を主催する団体に出資した。この団体は、科学とテクノロジーの力で、アスリートのパフォーマンスをエンハンス(強化)すると主張している。

ティールは1月30日「未来のオリンピック」を自称する民間スポーツ団体のEnhanced Games(エンハンスト・ゲームズ)のウェブサイト上で、同団体に数百万ドル規模のシード資金を提供した投資家として紹介された。

同団体には、ティールの他に、コインベースの元CTOのバラジ・スリニヴァサンや、精神疾患を治療するサイケデリックな医薬品を開発するバイオテクノロジー企業ATAIライフサイエンス創業者のクリスティアン・アンガーマイヤーらが参加している。

エンハンスト・ゲームズは、アスリートの薬物検査を行わず、スポーツにサイエンスを取り入れることを重視すると述べている。同団体はまた「エンハンス行為を行ったアスリートに汚名を着せるような、反科学的で時代錯誤な、古びたシステムには縛られない」と述べている。

このコンテストは「史上最も安全な国際スポーツイベント」を目指しており、あらゆるリスクを監視するため、出場する選手には完全なメディカルチェックを義務づけるという。

同団体は「エンハンス」と呼ばれる行為がアスリートの個人的選択であることを強調しているが、ウェブサイトには「エンハンスされたアスリートを進んで受け入れる」との記載があり、可能だとされていることの限界を押し広げ「世界新記録の樹立」を究極の目標とすると述べている。

このコンテストでは、個人の能力に焦点を当てるため、チームスポーツは除外され、陸上や水泳、格闘技、体操、筋力の5つのカテゴリで競技が行われる。

「危険なピエロのショー」との批判も

エンハンスト・ゲームズは「史上最も包括的なスポーツリーグ」を目指すとしており、プロやアマチュア、元オリンピック選手を問わず「すべての成人が競技に参加することができる」と述べている。登録は2024年後半に開始されるが、コンテストの正確な日程はまだわかっていない。

「今日のスポーツ界で行われている薬物検査は、必ずしもアスリートの安全のためではなく、競技スポーツにおける公正さと健康に対する一般の認識を歪めていることが多い」と、同団体の諮問委員会のメンバーで、キングス・カレッジ・ロンドンのスポーツ医学の臨床医で研究者のマイケル・サグナーは述べている。

一部の専門家は、エンハンスト・ゲームズのような取り組みは「アスリートの健康を危険にさらし、スポーツ競技の完全性と公平性を損なう」と批判している。米国アンチ・ドーピング機構(USADA)のトラビス・タイガートCEOは、このようなコンテストのアイデアは「茶番」だとCNNに語り「危険なピエロのショーであり、本当のスポーツではない」と付け加えた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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