国内

2024.02.05 14:30

広がる日本のラストベルト。対する3つの振興策

北海道、九州と巡っての気づきは三つあった。まず、これらの地域でいきなりソフト産業やスタートアップを誘致するのは得策ではない、という点だ。人が少なくソフトインフラが十分ではない状況で誘致しても、結局一時のミニブームで終わりかねない。人が集まっても、遠からず去られる、という苦い経験をもつ自治体は少なくない。

二つ目は、相当規模の大企業、特に製造業の誘致に注力すべき、という点だ。デジタル化やロボティクス化と円安で、日本における生産コストの低下が見込めるうえ、地政学的リスクを回避する観点からも、日本企業の国内回帰の動きが顕著である。往年のように大量雇用というわけにはいかないが、大規模製造業の経済波及効果は計り知れない。北海道のラピダスや熊本のTSMCへの期待度が高いゆえんである。

三つ目は、全国一律の金太郎飴のような振興策ではなく、それぞれの地域の特性に応じたやり方が大切だ、という点である。それも変動の激しいものやアイデア商法ではなく、地に根を張るものが欲しい。

風光明媚を誇る湘南地方は、近時、高品質な地元野菜の生産に力を入れている。それはそれで有意義だが、何よりもこの地の優位性は国際的な文化の発信と観光にある。

同じ湘南でも、気候風土、人口、交通インフラが著しく異なる「北の湘南」と南の湘南では、おのずから活性化の内容は違うと思う。世界で見ても、北欧と南仏では振興策はまったく別であるように。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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