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2024.02.02 08:00

「赤い口紅で希望を」戦禍のウクライナで化粧品を売る女性たち

安井克至
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赤い口紅が女性たちに希望を与える

メアリー・ケイは、戦争の開始から3カ月後に一部が破壊されたキエフの倉庫にあった化粧品を届け始め、2022年後半には、新たな製品の出荷を開始した。しかし、ロシアによる侵攻の開始後の3カ月で、600万人以上のウクライナ人が国外に逃れたとされている。

このことは、同社の販売員たちの収入にも大きな打撃を与えており、エレナ・クリフチェンコワによると、2000人のネットワークを抱える彼女の収入は、平均30%減少した。

また、販売員たちは計画停電の影響も受けており、35歳の元教師のナタリア・ソクラトワは、インスタグラムへの投稿やオンラインチュートリアルの開催、チームとの連絡を続けるために発電機を購入した。また、特定のプロバイダーのWi-Fi接続が停止した場合に備え、異なるワイヤレスプロバイダーのSIMカードを購入した人もいる。

メアリー・ケイの化粧品を販売しても、あまり儲からないと悩んでいる人もいる。2023年に販売を始めた弁護士のナタリア・マリネッツは、1日に2、3時間をビジネスに費やし、16人の販売員を勧誘したが、それでも月に200ドルほどしか稼げないという。

しかし、フォーブスが取材した他の多くの女性たちにとって、戦時中にメアリー・ケイの販売員として働くことのメリットは、追加の収入だけではないようだ。

昨年から販売を始めた元薬剤師のオルガ・ボイシャンは「メアリー・ケイは、人生の困難な時期に暮らしに彩りを与えてくれました」と語った。戦場にいる夫と息子からの便りを待つ彼女にとって、化粧品の販売は良い息抜きになるのだという。

「私は、この国の女性たちを暗い気持ちから救い出し、良い気分にさせるチャンスをもらったんだと思うんです」とマリネッツは語った。「赤い口紅は、第二次世界大戦中でさえ、女性たちの抗うつ剤のようなものだったのです」

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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