3. ユーモアで癒される
予期悲嘆が手に負えないほどつらくなったときは、笑うことで、自然にストレスを解消することができるかもしれない。笑いは、幸福ホルモンといわれるエンドルフィンの分泌を促すからだ。ユーモアが、感情を解き放つはけ口となり、悲しみや不安の重みを一時的に和らげてくれる。ある研究によると、ユーモアが好きな人の方が、大切な人との別れという悲嘆の悲しみに、うまく対処しやすいという。そうした人は、自分は状況に対処できるという「自己効力感」が強い。マイナスの身体的・感情的症状がより少なく、悲嘆の過程にあっても、全体的に正常に活動していくことができる。
ユーモアが持つ癒しの力は、予期悲嘆に対処しようとする際に、とても貴重な味方となる。そのアプローチは、以下のように多方面にわたる。
・感情的な対話を和らげてくれる。健康問題や、人生を締めくくるための決断など、高齢化に関連した話し合いの場では、ユーモアが緊張を和らげ、話しやすい雰囲気づくりに役立つ。深刻な話し合いを始める前に軽口を叩けば、難しい話へと入っていきやすくなる。
・感情面のレジリエンスを生む。難しい状況を別の視点からとらえ直し、苦しい場面でもユーモアを見いだせるようになる。ユーモアを親が受け入れられるように支えることで、老化に伴う変化に適応し、前向きな姿勢を維持するよう、力づけることができる。
・介護の仕事に遊び心を取りまぜる。ユーモアがあれば、介護がより楽しくなるし、介護をする側が感じがちな精神的負担を軽減する。例えば、服を着せたり食事をさせたりといった日常的動作を手伝う際には、遊び心を取り入れよう。ふざけた歌を歌ったり、面白い話を語って聞かせたり、ちょっとした冗談を織り交ぜたりして、介護を、機能面だけを支える味気ないものではなく、もっと人間的に感じられるようにしよう。
予期悲嘆は、私たちの愛情の深さや、親とのつながりを反映した、深い感情の旅だ。そうした旅で歩を進めるにあたって、自分が感じる感情は妥当なものであることを知ろう。そうした感情に健全なかたちで対処する方法を見つけることは、自分自身ならびに高齢の親についての理解を深めることにつながり、ひいては互いの絆を強めてくれるということを知っておこう。
悲嘆のなかを進む旅は、人それぞれに異なるものだ。だから、さまざまな対処法を試し、自分に合った方法を見つけ出すことが特に大事であることを忘れないでほしい。
(forbes.com 原文)