欧州

2024.01.28 14:00

石油・ガスをドローンで「起爆」 ウクライナ、ロシア国内施設を次々攻撃

遠藤宗生

戦略的目標

これだけの量のドローンがあれば、戦略的目標を達成するのに十分かもしれない。

ロシアは昨年の冬、ミサイルと並行してシャヘドを使ってウクライナのエネルギーインフラを標的にし、ウクライナを寒さで参らせようと変圧器や変電所を破壊した。この冬もこのアプローチを繰り返しているが、効果は限定的だ。

だが、ロシアの武器がいわば「氷」だとすれば、ウクライナのドローン戦争での武器は「火」であり、ロシアの重要な石油・ガス施設を燃やしている。

((Tendar))というハンドルネームのX(旧ツイッター)ユーザーは、ロシアには海港を終点とする主要な戦略的パイプラインが5本しかないと指摘する。バルト海に3本、黒海に2本だ。他のパイプラインはウクライナや北大西洋条約機構(NATO)の加盟国を経由しており、いずれも制裁対象となっている。これまでに、5つの海港のうち2つが攻撃を受けた。ウスチルガの施設の操業は数週間停止する見込みで、その間にさらなる攻撃があるかもしれない。

石油とガスの輸出はロシア経済を支える重要な柱だ。ロシア産を求める顧客は、ドローン攻撃を継続的に受けている港にタンカーを送りたがらないかもしれない。紅海と同様、脅威はリスクのレベルよりも重要かもしれない。

一方、ロシアの人々は暖房の停止と停電の急増に苦慮している。ロシア紙モスクワ・タイムズによると、43の地域で緊急事態が発生しており、何十万もの人々が暖房や電気を使えない状態だという。これはインフラの老朽化と維持費不足が原因だ。今年、住宅と公益事業への支出が43%削減されるため、こうした状況は改善されることはないだろう。石油やガスの供給停止はさらなる問題となる。

ロシアは戦争経済に移行したが、その脆弱(ぜいじゃく)さは増しているようだ。巨額の軍事費が経済を支えているが、これがいつまで続くかは誰にもわからない。

膨大な数の石油・ガス施設はいま、ウクライナ軍が狙える範囲内にある。これらの施設すべてを攻撃から守ることは、たとえ防空システムを前線から移動させたとしても不可能だろう。いずれにせよ、ロシアが現在運用する防空システムは小型のドローンに対しては有効ではない。

ロシアのプーチン大統領に今できることは、石油・ガス施設が炎上するのを何もせず見守ること、そしてこのダメージが経済破綻やクーデター、大規模な暴動を引き起こさないことを祈ることくらいのようだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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