F-16
ウクライナはF-16をオランダから42機、デンマークから19機取得することになっており、ノルウェーからもの取得数も十数機になる可能性がある。ウクライナ空軍のパイロットは米国やルーマニアで訓練を受けており、最初分のF-16は近々ウクライナに到着する見込みだ。3カ国から供与されるF-16はすべて同じモデルとなっている。
・F-16AM/BM Mid-Life Update
1980年代製の機体を1990年代から2000年初めにかけて大幅に改修した就役中近代化(MLU)型。
F-16は、敵の防空の制圧や破壊をはじめ、最も危険な任務でウクライナ空軍の遂行能力を高めるはずだ。
AN/ASQ-213センサーポッドを備え、AGM-88で武装した単発の超音速機であるF-16は、約130km離れた敵の防空施設の位置を特定し、攻撃目標にできる。敵の対空兵器を攻撃するのが危険すぎる場合、ADM-160デコイ(おとり)ミサイルを発射して惑わせることも可能だ。
航空優勢の確保任務では、AIM-120空対空ミサイルがF-16の最高の武器になる。AIM-120の最大射程は105km(編集注:AIM-120C型の数字)とされ、ウクライナ空軍が現在用いているR-27ER空対空ミサイルの最大射程よりもやや長い。
AIM-120に関してさらに重要なのは、ミサイル自体に小さなレーダーを搭載するいわゆる「撃ち放し(ファイア・アンド・フォーゲット)」ミサイルだという点だ。戦闘機はAIM-120を射撃後、即離脱できる。一方のR-27ERはセミアクティブレーダー誘導ミサイルで、戦闘機はこのミサイルが飛翔している間、みずからのレーダーで目標を照射し続けなくてはならない。そのため、敵機からの応射にさらされやすい。
F-16のAN/APG-66(V)2レーダーは探知距離が110kmほどあり、MiG-29のN019やSu-27のN001、N010を上回る。F-16はAN/ALQ-213電子戦システムも装備し、センサー、ジャミング装置、チャフ(レーダー電波を散乱させる金属片など)やフレア(赤外線誘導ミサイルを追尾させるおとりの熱源)などの撹乱物を組み合わせて、ミサイルから自機を守る。MiG-29とSu-27にはこうした電子戦システムもない。
F-16はこのほか、リンク16戦術データリンクにも対応している。これはF-16と、パトリオット地対空ミサイルシステムやNATOの早期警戒管制機などほかのユニットをつなぐ、安全性の高い無線データ接続網だ。F-16のパイロットは、リンク16で結ばれているほかのユニットに見えているものを見ることができる。
F-16がウクライナの空戦能力を高めることは間違いない。どれくらい高めるかは、ウクライナが最終的にそれを何機取得できるかで変わってくる。デンマーク、オランダ、ノルウェーには、これまでに約束した分以上、譲渡できるF-16はもうない。
ほかのNATO諸国、なかでも米国は古いF-16を多数保有している。だが、米国は先月、ウクライナ向け予算がほぼ底をつき、ウクライナへの兵器供与を停止した。米議会のロシア寄りの共和党議員らは、新たなウクライナ向け予算の承認を拒んでいる。
(forbes.com 原文)