健康

2024.03.05 17:15

寝酒するとなぜ明け方に覚醒するか。とくにヤバいのは「あの酒」

muratdeniz/Getty Images

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あなたは、今日も朝から晩までの長い仕事を終えて帰宅し、夕食を食べ、子供たちを寝かしつける。そしていつものように眠りにつく前にちょいと晩酌をする。
 
いや、もしかすると今日は華の金曜日で、同僚と少しおしゃれなパブにいる。そして、家に帰る前にもう一杯だけ飲もうかと思っているかもしれない。

その「最後の一杯」「寝る直前の楽しみ」は、あなたをすみやかに夢の世界へと誘うのか? もとい、その一杯が眠りの質を下げてしまうのか? 答えは「その両方が起こりうる」である。

本記事では「寝酒をすると体の中で一体何が起こるのか?」を説明する。また、いつものように金曜日を楽しみたい読者には、睡眠を守るためのちょっとしたヒントをも差し上げることとする。

「飲酒でどうなる?」をおさらい

飲酒をすると、まず、すぐにアルコールは血流に入り、そのまま脳へと移動する。そこで神経伝達物質として知られる化学伝達物質に作用し、神経細胞間で行われるコミュニケーションを鈍らせる。

脳のある特定の領域はアルコールの影響をとくに受けやすい。アルコールはそれら領域の細胞に影響を与え、全体的な効果として、リラックス効果、抑制力の低下、ろれつが回らない、眠気や無気力といった特徴的な効果や状態を引き起こす。

また、アルコールは心臓や循環器系にもただちに影響を及ぼす。心臓や循環器系にアルコールが影響すると、血管が広がって血圧が下がり、めまいがしたり、ふらついてしまったりする。

「直後」には何が起きる?

寝る前にアルコールを飲むと、スイッチが切り替わったような状態となる。最初のうちは、アルコールには鎮静作用があるため、リラックスして眠りにつきやすくなるだろう。

この時点では、まだ血中アルコール濃度は高くなっている。だがこの、「寝付きがよくなる」事実に騙されてはいけない。体内でアルコールが処理され、夜が更けるにつれ、アルコールは「睡眠を妨げるものへと変貌する」のだ。

そして、しばらくすると?

体内でアルコールが処理され、血中アルコール濃度が下がるにつれ、徐々に、飲酒直後に感じていた眠気を脳が跳ね返すようになる。
 
そのため睡眠が妨げられ、とくに0時を過ぎたあたりから何度も目を覚ましたり、かなりはっきりとした悪夢を見たりするのだ。

この睡眠障害は、主に深い眠りの時間、すなわち「急速眼球運動」(REM睡眠)の際に起こる。

REM睡眠は、感情の調節や認知機能に重要な役割を果たしている。そのため、十分な睡眠がとれていないと、起床後に不快で嫌な気分になったり、ふらふらしたりしてしまうのだ。

また、就寝前に飲酒すると、全体的に睡眠時間が短くなる傾向がある。長く休息し、翌日に向けて体力をチャージするための大切な時間が短くなるわけだ。
 
以上で、飲酒したその日、つまり短期的な影響について述べたが、アルコールが睡眠に及ぼす「長期的な影響」はどうだろうか。適度な飲酒をする人であれ、大量に飲酒をする人であれ、飲酒は、長期的には、睡眠の質の低下を常時引き起こし、なおかつ、睡眠障害を多くするのだ。

では、華の金曜日にはどうすればいいのか

もし今週末、お酒を飲む予定があるなら、アルコールの睡眠への影響を最小限に抑えるためのヒントをいくつか紹介しよう。

・アルコールとノンアルコールを一杯おきに交互に飲む。お酒を飲めば飲むほど、睡眠の妨げになることが予想される。一度に飲む量を減らせば、睡眠への影響を最小限に抑えることができる。

・就寝間際の飲酒は避ける。眠る前に体がアルコールを処理する時間を設けることにより、睡眠が妨げられることは少なくなる。

・食べながら飲む。空腹時に飲むと、アルコールの吸収が早くなるため、アルコールの効果が悪化する。

・カフェイン入りの飲み物は控える。エスプレッソ・マティーニ(コーヒー、ウォッカを用いたカクテル)などのカフェイン入りの飲み物は控えた方が好ましい。カフェインは眠りを浅くし、眠りを妨げる。

・睡眠時無呼吸症候群の人は気を付ける。睡眠時無呼吸症候群の人は、飲酒によってさらに大きな影響を受ける可能性がある。アルコールは筋肉を弛緩させる作用があるため、いびきをかきやすくなり、血液中の酸素濃度が低下する。睡眠時無呼吸症候群の場合、飲酒量を制限することが、これらの影響を避ける最善の方法である(注:睡眠時無呼吸症候群=睡眠中に上気道が何度もふさがれ、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体の低酸素状態が発生する病気。過度ないびきや日中の眠気に襲われるのは、この病気の可能性も考えられる)。

 ・水をたくさん飲む。水分補給をすることでよく眠れるようになり、翌日の二日酔いという最悪の状態を食い止めることが期待できる。




※本稿は「Livescience」からの翻訳転載である。

Livescience 石井節子

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