事業継承

2024.01.31 08:00

事業承継に悩む、中小企業の社長が今から実践できる3つのこと

shutterstock

先日、広島県の社長(以下、A社長)からお手紙をいただいた。

『先日は面談をありがとうございました。お話をした通り、いますぐ会社を誰かに譲るということは考えていません。しかし、ご説明いただいた中で、将来的に誰かに譲らなければいけないという観点はまさにその通りだと気づかされました。自分自身の人生を考えたときに、7年後を目安に息子か他の会社かに譲るつもりでいるのですが、いま準備をしたほうがいいことがあれば具体的に教えてもらえませんか』

このお手紙は、ご面談をさせていただいてから約4カ月後に筆者に送られてきたものである。A社長のご年齢は50代半ば。ご面談では、「いますぐ譲渡をしないまでも、60歳をめどに誰かに託さなければいけない。ただ、まだ焦る必要はないし、いまできることは特にない」という認識でいらっしゃった。

これに対し、その通りでありながらも、事業承継の準備を丁寧にしていたがためにスムーズに次の社長に引き渡すことができた事例を説明した。やはり、事業承継の問題は、会社経営において最も重要な経営課題でありながら、喫緊の課題ではないという捉え方をされるのであろう。

今回のコラムでは、事業承継の対策として、事前に準備をしておいたほうが良いことを話したい。こうした準備の有無で結果が大きく変わってくるからだ。

理想は社長がいなくても自走できる状態をつくる

後継者問題を解決する代表的な方法は、(1)親族内承継(息子や娘などに継ぐ)、(2)従業員承継(役員や従業員に継ぐ)、(3)上場、(4)M&A(第三者に継ぐ)、(5)清算の5つがあることを第3回のコラムで述べた。事業承継をする場合、この5つから、親族内承継、従業員承継、M&Aの3つのいずれかに該当することになる(上場と清算は性質が違うため除く)。

事業承継の準備のポイントは、大きく分けると、以下の3点だ。

1. 社長の業務を明確にし、会社経営の「取扱説明書」をつくる
2. 社内外のキーマンに対する事前準備をする
3. 株価試算をする

ここで読者の皆さんにあらためて理解をしていただきたいことがある。それは、親族内承継、従業員承継、M&Aのどれにおいても、自分以外の「誰か」が継ぐという意味では本質的には違いがないということだ。自分以外の誰かが引き継ぎやすく準備をすること、これが事業承継の準備の考え方である。子どもに継がせることと、会社を第三者に譲渡すること、この2つは、まったく違う認識であるという方が多いが、事前準備という点では共通することが非常に多い。
次ページ > 会社経営の「取扱説明書」とは

文=安藤智之

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事