──「リングの神様」という言葉もありましたが、実際、小比類巻さんがリングで祈るように見える瞬間もありました。
エキシビジョンなので倒し、倒されという殴り合いをしたわけではなかった。ただ、リングに上がるときには、神社で祈るような気持ちに自然となりました。それでリングの下で手を合わせ、試合に臨む意気込みと、久しぶりにリングに上がらせてもらうことに対する挨拶をしました。
試合は相手があって成立するものです。呼吸が合わないと良い試合にならない。今回の試合前には「お互いに今の自分たちの姿を見せましょう」とだけ話して向かい合ったのですが、対戦した島原祐基さん(医療AI推進機構 機構長)は私の動き、呼吸も見ながら良いキックを出してくれた。お互いに打てば返すような展開で、気持ちの合ったリングで今の私を表現できたのではないかと思っています。
世界、地方創生。格闘技に愛された男が目指す次のステージ
──地方の支部も増え、それらを通じた地方創生も始められていると聞きました。2023年春、徳島県南部にある那珂町の木頭地区に「小比類巻道場木頭支部」を開設しました。ここは人口が1000人くらいで高齢者も多い。私が直接行く機会は多くないのですが、リモートで指導しています。今はオンラインで全国各地とつながることができるので、木頭支部と東京の本部をつないで3人ずつ選手を出し、オンライン対戦をしてもらっています。画面に向かって1分間、互いに打ったり守ったりして、判定します。
オンラインだと、性別や年齢、階級も関係なく対戦できます。怪我もしないので、高齢者と小さい子供が対戦し、コミュニケーションが生まれる。そうした事例を木頭支部を起点に作ることができれば、他の地域にも広めることができると思っています。
格闘技で身体を動かすことは健康にもつながりますし、元気さを実感できます。過去には、不登校だった学生が格闘技を始めて気持ちが前向きになり、学校へ通えるようになったことがありました。
日本にはたくさんのスポーツの選択肢があって、今はワールドカップ開催でバスケットボールに再度注目が集まっています。格闘技もかつては、年末に民放の3つのチャンネルが生放送していたこともあるくらい、基本的に日本は格闘技が好きな国だと思っています。課題もたくさんありますが、私たちの活動で競技の裾野を広げ、「EXECTIVE FIGHT-BUSHIDO」の開催を通じてその素晴らしさを表現し、憧れてもらえる存在にしていきたいですね。
──第10回を終えて、今後の「EXECTIVE FIGHT-BUSHIDO」の展望をどうお考えですか。
日本では私たちの大会以外にもプロアマ問わず、多くの格闘技大会が開催されています。そこでリングに上がっているエグゼクティブもいるはずで、今回私たちがチャンピオンを輩出したことで、今後、私たちの大会の現チャンピオンに挑戦したいと思うエグゼクティブが出てくるのではないかと考えています。それをどう迎え撃ってくれるのか、楽しみにしています。