その方の「EXECTIVE FIGHT- BUSHIDO」での軌跡は、敗北を糧にした象徴的なケースではないでしょうか。
リングの敵が、ビジネスでは味方に
──会場で熱戦を見て、リングに上がる選手だけではなく応援するセコンドや社員、家族の姿も印象的でした。小比類巻さんは声援の重要性をどう見ていますか。社長が挑戦している姿は、社員の前向きな気持ちにもつながります。社内だけでなく、取引先から「今度試合するらしいね、頑張ってね」と大会のことを話していないのに声をかけられることがあるそうです。
社長やエグゼクティブがリングに上がるというのは会社を背負うことでもある。リングという嘘の通用しない場所で挑戦するのはすごいことですし、応援し、支える人たちがその人に敬意を持つようになるのは自然だと思っています。
──参加するエグゼクティブ同士の交流も、大会を重ねるごとに活発化しているようですね。
そうですね。10回目の大会ともなると選手同士も顔見知りになりますし、「今回も赤コーナー同士だね。お互いに勝とうね」と階級を超えた敬意も生まれる。それはある意味、友達以上の関係だと思います。私から何も言わなくても、控え室という場所にはそういう神様がいるのだと感じます。
対戦相手に対しても尊敬の気持ちが生まれて、試合後に花道を下がるときに肩を組んで帰っていくような姿は、格闘技にしかないものです。まして憎くもない相手を殴り、傷つけあうわけですから、そこには経験した人にしかわからない絆が生まれます。過去の大会で拳を交えた人同士が、ビジネスで協力関係を築くケースもあります。
戦うエグゼクティブは「タイガーマスク」。大会が目指す社会貢献
──今大会では小比類巻さんもリングに上がり、スペシャル・チャリティーエキシビジョンマッチを戦いました。格闘技が社会にもっと受け入れられるために、どうすればいいのかをいつも考えています。その中で経営にも必ず必要な「闘争心」を、格闘技を通じて磨いてもらおうと「EXECUTIVE FIGHT-BUSHIDO」は始まりました。
リング上の戦いは殴り合い、喧嘩です。「火事と喧嘩は江戸の花」という言葉もあるように、喧嘩には華がある。格闘技も英語にすると「Martial Arts」というように、アートが含まれている。身体を使った殴り合いの華、アートを見てもらって、リングに上がる人だけではなく、見た人にも共感してもらいたい。その共感が社会や経営のためになり、日本全体にいい影響を生み出せればと考えています。そうした思いを表現する手段のひとつがチャリティーです。
今回、日本こども支援協会さんに寄付を行いました。「EXECUTIVE FIGHT-BUSHIDO」のエントリーフィーや大会のスポンサー企業から集まったお金を寄付できるようにしたいという私の思いを知った方の紹介で、声をかけさせていただきました。取り組みとしては、さまざまな事情で家族と一緒に暮らすことができない子供たちが暮らす施設への訪問や、子供たちの観戦招待なども行なっています。
活動のイメージは「タイガーマスク」です。経営者たちが格闘家というマスクを被ってリングで戦う。その戦いが子供たちの支援につながる、そんなことを期待しています。