とはいえ、かのナポレオン・ボナパルトが言ったとされるように「敵が過ちを犯すのを決して邪魔してはならない」のだろう。
Il-76は、エンジンを4基積み、空虚重量(搭乗する人員や積載物、燃料などを含まない重量)100tほどの大型輸送機で、ロシア軍ではおよそ130機が運用されている。うち1機が24日、ウクライナ軍のミサイルによって撃墜されたようだ。ラジオ・フリー・ヨーロッパの調査チームは、死亡したロシア軍の搭乗員3人を特定している。
ロシア政府はIl-76が破壊された事実を否定しようがなかった。その様子は地元の人によって動画に撮影され、すぐにソーシャルメディアで共有されたからだ。雪の積もった墜落場所(編集注:ベルゴロド市の北東約70kmのヤブノロボ村付近と報じられている)の動画もある。
また、ウクライナ側による撃墜だったということを否定するのも難しそうだ。ある動画では、ミサイルの形跡である煙のたなびきらしいものが確認できる。
だが、ロシア側は撃墜の事実を偽情報で糊塗すること、少なくともそれを試みることはできる。ロシア外務省は、このIl-76は「合意されていた捕虜交換のため、ウクライナ人捕虜65人を移送していた」と主張し、その全員と搭乗員6人、ロシアの軍人3人が死亡したとしている。
それは嘘かもしれない。墜落場所の動画に多数の遺体は映っていない。ロシア側が墜落機に搭乗していたとするウクライナ人捕虜の名簿には、すでに交換されている捕虜の名前が含まれるとの指摘もある。
現時点で入手できる証拠は、正当な軍事目標の撃墜だったことを示しているように思える。おそらく、友軍によるウクライナ人捕虜の意図しない大量殺害ではなかっただろう。とはいえ、情報がもっと入手できるようになれば、再評価する必要があるかもしれない。