許しのプロセスの第一歩
人を許せるようになりたいと思っている人に対して、ニコルズ=ジャーメインは、第一歩を踏み出すために役立つステップをいくつか紹介している。「自分にできること」に焦点を合わせる
相手が何をできるのか、何をすべきなのかということは、自分の力が及ばないことだ。そうしたことにばかり目を向けるのを止めよう。そして、前進するために、自分にできることは何なのかを見極めるところから始めよう。
例えば、対立や争いに責任を持つという意識をもち、自分の役割は何かを考えること。あるいは、マインドセットの転換が必要だということを理解することが挙げられる。
ストーリーをとらえ直す
ニコルズ=ジャーメインは、状況についての自分の見方を簡単に変えられる方法として、ストーリーをとらえ直すよう勧めている。
相手をどうしても許せないと思っているなら、「相手は、意図的に、あるいは怠慢により、自分を傷つけるような行動をとっている」というストーリーを、自分自身に言い聞かせている可能性がとても高い。そうしたストーリーで自分自身をがんじがらめにするのを止め、それとは異なる真実が存在しないかと考えてみよう。
どんなシナリオが他にあり得るだろうか。相手が自分を意図的に傷つけようとしたわけではなかったという可能性はあるだろうか。相手にそうした行動をとらせる要因が他にあるのではないか。そうした行動をとるのは、相手自身が傷ついたり、苦しんだりしているからという可能性はないだろうか。
このプロセスで役に立つのが、共感力だ。相手の立場になって考え、その状況には他にどのような真実が伴っている可能性があるかを検討してみよう。
より大きな目的や動機を思い出す
相手をなかなか許せない場合は、より大きな目的、または「これは何のためか」という問いかけを頭に思い浮かべるよう、ニコルズ=ジャーメインは勧めている。その際には、必ずしもスピリチュアルあるいは宗教的な考え方をする必要はない。
例えば、子どもや配偶者に対する愛情を思い起こすのもいいだろう。ビジネスシーンでは、自分が相手を許せば、収益が増加したり、自分や同僚が手にできるチャンスが増えるという可能性を、あれこれ考えるのも役立つはずだ。
「優位な立場」を失う恐怖を克服する
「許すこと」の前に立ちはだかる最大のハードルのひとつは、これから相手と関係を築いたりやりとりしたりするなかで、自分の優位性が失われるのではないかという恐怖だ。怒りや憤りを覚えると、どういうわけか、自分がよりパワフルで、守られているかのように思えてくる。しかしそうした見方に、ニコルズ=ジャーメインは異議を唱える。「あなたを守ってくれるのは、怒りや憤りではない。怒りや憤りは、実際にはあなたに悪影響をもたらす」とニコルズ=ジャーメインは話す。
それよりも、「より強固な境界線を設けること」に集中した方がいいと、ニコルズ=ジャーメインは勧める。
「あなたを守ってくれるのは境界線だ」と彼女は続ける。「境界線は、実際に起こったことの妥当性を無視したり打ち消したりするものではない」。
どのくらい感情を害しているのか、傷ついているのかにもよるが、許せるようになるには時間がかかる。そのため、時間をかけて、「許すことを」少しずつ習慣化していくことに力を入れるよう、ニコルズ=ジャーメインはアドバイスしている。
「何事もそうだが、筋肉をつけるようなものだ。日常的に小さなことから始めていくといいだろう」。
(forbes.com 原文)