ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは「アウジーイウカの北側はAKHZ(アウジーイウカ・コーク・ケミカル・プラント)の工場の堅牢な産業構造物によって守られているが、南側は主に、砲撃に弱い1階または2階建ての家屋で構成されている」と解説している。
「これはロシア側にとって、既知のやり方で接近するのにふさわしい条件が整っているということになる。あるエリアを制圧できない場合、そこを砲撃して瓦礫にする。そのあとで軽歩兵を送り込んで占拠する、というやり方だ」とフロンテリジェンス・インサイトは続けている。こうしたやり方で、ロシア軍は次はゼニトの遮断に成功するかもしれない。もしかすると、すぐにでも。
ゼニトを落とされれば、アウジーイウカの南翼全体が崩れかねない。もしそうなれば、ウクライナ軍の指揮官は、すでに廃墟化しているこの市の防衛戦をこれ以上続けるのは危険すぎると判断するかもしれない。市の西方に用意した陣地への撤退を部隊に命じ、3月にいかさまの大統領選を控えるロシアの政権に、プロパガンダの面で大きな勝利を与えてしまうかもしれない。
ロシア軍がアウジーイウカの南側で火力第一の戦術をとれるのは、砲弾の数でウクライナ側の10倍という圧倒的優位に立っているからだ。「このギャップは、欧州からの供給が不十分なこと、そして内政上の問題で米国からの支援にも支障が出ていることから生じている。ロシアはそれを突いている」とフロンテリジェンス・インサイトは述べている。
ロシア側のこの優位性は必然的なものではなかった。それは事実上、米国の共和党が政治的な選択によってもたらしたものだ。
下院共和党がバイデンの予算案を昨年10月の提起時点で通過させていれば、ウクライナ軍が今ごろ弾薬不足に落っていることはなかっただろう。そして、ゼニトが陥落の危機に瀕することもなかったかもしれない。
(forbes.com 原文)