経営・戦略

2024.01.26 09:15

「売れる営業」は何が違う? CRMの本当の使い方【マッキンゼー営業改革の教室】


一方、顧客が他のサプライヤーと案件を固め、いざ購買という段になって複数社にRFQを出すのを拾ってくるだけの営業は、営業プロセスの途中段階(レベル3)から突然、案件数が増えることになります。

顧客が民間企業の場合、自社のニーズを具体化し、必要となる商品やサービスを明確化するプロセスを、サプライヤーと共に進めるケースもあります。その後、購買する段になって複数社にRFQを出すときには、すでに本命の一社が決まっていることも多い。そのため、今までまったく案件に絡んでいなかった企業は、当て馬のように扱われ、買いたたかれることもあるのです。

安ければ採用される可能性もありますが、安すぎると採用されません。また、コスト高になるリスクを査定しきれておらず、設定した価格よりコストが上回ってしまうこともあります。RFQを取ってくるだけの営業では、利益率改善は狙えないわけです。

CRMで、営業個々人が持っている見込み案件のステップ・レベルを見える化することで、その営業パーソンがどのような営業アプローチをしているかがつまびらかになります。近年、「提案営業が出来る組織」を目指す企業が増えていますが、CRM/SFAを使うことで、現状を見える化することも有用になります。

生成AIを活用してCRMの効果を飛躍させる

最後に、話題の生成AIをCRMで活用している海外のベストプラクティスをご紹介します。日本ではChatGPTが有名な生成AIですが、他にもプログラミングのコード生成ツールのGithub、プレゼン資料生成ツールのBeautiful.ai、画像生成ツールのStable Diffusionなど、様々なコンテンツ生成ができるAIツールがあります。

これらをCRMの中に組み込んで、CRMの中にある顧客情報から即座に営業に必要なプレゼン資料や顧客との会話を生成し、営業そのものを効率化しようという動きが、すでに海外では始まっています。

例えば、あるリーディング企業では、顧客がサービスを予約する際、スピードと利便性を最も重視することが分かり、CRMに自動的に会話を生成する生成AIを組み込み、CRMに登録されている見込み客に開拓活動を行ったそうです。

その結果、87%もの見込み客が人間の営業を介さずにコミュニケーションができ、全体のコンバージョン率が25%も上昇したというのです。(Russel Grove et al, Tech-powered growth: Three things growth leader do differently)

法人営業においても、中小規模アカウントの再活性化や解約防止などで、CRMと生成AIの組み合わせを活用できると私は考えています。

売上があまり大きくない中小規模のアカウントに対して、営業リソースを割くことができず、そのまま失われていくケースは多く見られます。生成AIにより、メールなどを使って低コストで提案活動を行うことができれば、これらのアカウントの再活性化に役立つでしょう。

図4:生成AIが世界の生産性貢献に大きく貢献している

文=倉本由香利

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