経営・戦略

2024.01.26 09:15

「売れる営業」は何が違う? CRMの本当の使い方【マッキンゼー営業改革の教室】

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マッキンゼーでは、営業に限らず、購買、生産などすべての分野のアイデア管理に「実行レベル」という概念を用います。どこまで実行したか、5段階のレベルで進捗を見える化することで、「やった・やっていない」の二元論を避けると同時に、いつ・どの程度の確率で成果が出るかの予測をしやすくします。アイデアすべてを足し算すると、改革全体で、いつまでに何円の売上成長や利益増加につながるかを算出できます。
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営業改革やCRM導入、SAR導入など全ての改革において言えることですが、改革の結果、売上がいくら成長するのか、利益がいくら良くなるのか、ということを具体的な数字に落とし込んでおくことは、組織が改革を最後まで遂行し、成功させるために非常に重要です。

改革は社員のモチベーション向上や顧客満足度向上のため、という大義名分はもちろん大切ですが、具体的な数値的目標を作っておくことで、「あの改革はいったい何だったのか」となることを防げます。CRMを使いこなし「実行レベル」を導入することで、これらの具体的な数値目標への達成度合いをリアルタイムに図ることができるのです。

図2: 新規案件開拓の営業プロセス

新規案件創出の営業においては、レベル1は顧客ニーズ明確化と案件の仮説出し、レベル2は案件規模と時期の明確化(顧客からのRFP受領でも良い)、レベル3は顧客への提案、提案書の提出、のように定義します。
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そしてレベル4は契約の締結、レベル5は実際に物が出荷され始め、収益が上がり始めることです。レベル2以降は売上規模が具体化されるので、それぞれの案件の確度を定めれば、いつ、どれだけの売上が達成できるのかを自動的に算出することができるわけです。

これらの情報をすべてCRM/SFA上で常に見える化し、自動算出する仕組みを入れるだけで、現在の見込み案件がいつどれだけの売上になるのかを即座に見える化できます。

2、3年先の売上高や利益額が見えるので、組織として目指す売上高・利益額に達するのかも分かります。複数の案件が早い段階で頓挫したり、成立確度が大幅に変動したりするような事態が起きた際に、もっと営業にはっぱをかけて、新規案件の創出を行う必要があるのかどうかを即座に判断することができるのです。

ゼロをイチにする営業か否かを区別する

CRM/SFAによる営業プロセスや実行レベルの見える化には、もう一つ大きなメリットがあります。

それは、顧客をゼロから開拓して関係構築し、提案に結び付ける営業と、顧客からすでにできあがった案件のRFQ(見積依頼書)を取ってくるだけの「当て馬」営業とを区別することができるということです。

顧客をゼロから開拓して提案営業をしている営業は、営業プロセスの初期の、まだ案件として十分に固まっていない案件(上記事例でいうレベル1や2の案件)がより多く登録されているはずです。
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文=倉本由香利

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