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2024.01.26 09:00

バーチャル本社アプリ「Roam」は、オフィス用「忍びの地図」

一方、オンラインオフィスのビジュアル版を作ろうとしている会社はRoamだけではない。パンデミック初期の単純なゲームスタイルのアプリから、「メタバース」で人々を働かせようという失敗が約束されているような多くの試みまで、いわゆるバーチャルオフィスを作ろうという取り組みは数多くある。Kumospace(クモスペース)やGather.town(ギャザー・ドット・タウン)のようなベンダーもバーチャルオフィスを提供している一方で、Zoomのような老舗サービスは予定なしで開く会議のための「ハドル」という機能を提供していると、米調査会社ガートナーのアナリスト、アダム・プリセットは指摘する。さらに、Zoomの「マイ・オフィス・ビュー」機能は、同僚の出社状況や位置情報を表示できる。これは2024年内に利用できるようになる予定だ。

このような選択肢があるにもかかわらず、バーチャルオフィスツールは「ニッチ市場」だとプリセットは指摘する。また、ハイブリッドワークのためのツールからAIに重点を移しているプリセットの顧客は、こうしたツールの情報をあまり求めていないという。企業はツールの追加をためらっているのかもしれない。「この分野での顧客の増加は、かなり限定的だと思う」(プリセット)。

Roamは、ゲームのようなアバターを画面上で別のオフィスまで「歩かせる」ことに時間を費やしたくない企業をターゲットにしており、黒くて余分なものがなく、多くの場合音声を優先するインターフェースで、他とは一線を画すことを目指している。「超ミニマリズムの要素があり、魅力を感じる人もいると思う」とプリセットは言う。

Roamでは、個々の「オフィス」とチームルームは共に音声のみが利用でき、「会議室」と「シアター」ではビデオも選択できる。同社によると、Roamでの会議の76%は音声のみであるという。オプションがあるだけでもストレスになるため、特定の「部屋」では意図的にカメラのオン・オフを選択できないようにした。ラーマンがアプリを開発する際に最も苦労したことのひとつは、ビデオと音声のツールを適切に配置することだったという。「人々のつながりは常に変化しているため、非常に複雑な問題だ」とラーマンは指摘。「すべてを自分たちで作った」という。

ラーマンによると、需要は旺盛で、営業活動はしていなかったにもかかわらず、昨年12月だけで順番待ちに800件を超える申し込みがあったという。RoamはSlackやマイクロソフトのTeamsのように、ユーザーが設定できる「おやすみモード」機能を提供している。Roamのデータによると、ユーザーは夜間と週末にログオフするのが一般的だという。特定の会議の存在を同僚に知られたくないとしても、隠すことはできない。「透明マントはない」と、ラーマンはまたもやハリー・ポッターに絡めてジョークを飛ばす。だが、代わりにいつでも電話をかけてプライベートな会議を持つことができる。

一方でラーマンは、従業員をオフィスに戻そうとする動きがRoamの需要に影響を及ぼすことを懸念していないようだ。ハイブリッドワークを取り入れている組織では「成功する企業の100%は分散型だ」とラーマンは言う。「企業が解決すべき課題は、金曜日は在宅勤務を認めるべきかどうか、だけではない。テキサスに営業担当者がいて、フィリピンにコールセンターがあり、バージニア北部に開発センターがあるような場合に、会社の各部門をどのように連携させるか、ということだ」。ハイブリッドワーカーの所在地を把握できるよう、Roamではユーザーのプロフィールにある小さなボックスにオフィスの場所が表示される。
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翻訳=溝口慈子

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