このような選択肢があるにもかかわらず、バーチャルオフィスツールは「ニッチ市場」だとプリセットは指摘する。また、ハイブリッドワークのためのツールからAIに重点を移しているプリセットの顧客は、こうしたツールの情報をあまり求めていないという。企業はツールの追加をためらっているのかもしれない。「この分野での顧客の増加は、かなり限定的だと思う」(プリセット)。
Roamは、ゲームのようなアバターを画面上で別のオフィスまで「歩かせる」ことに時間を費やしたくない企業をターゲットにしており、黒くて余分なものがなく、多くの場合音声を優先するインターフェースで、他とは一線を画すことを目指している。「超ミニマリズムの要素があり、魅力を感じる人もいると思う」とプリセットは言う。
Roamでは、個々の「オフィス」とチームルームは共に音声のみが利用でき、「会議室」と「シアター」ではビデオも選択できる。同社によると、Roamでの会議の76%は音声のみであるという。オプションがあるだけでもストレスになるため、特定の「部屋」では意図的にカメラのオン・オフを選択できないようにした。ラーマンがアプリを開発する際に最も苦労したことのひとつは、ビデオと音声のツールを適切に配置することだったという。「人々のつながりは常に変化しているため、非常に複雑な問題だ」とラーマンは指摘。「すべてを自分たちで作った」という。
ラーマンによると、需要は旺盛で、営業活動はしていなかったにもかかわらず、昨年12月だけで順番待ちに800件を超える申し込みがあったという。RoamはSlackやマイクロソフトのTeamsのように、ユーザーが設定できる「おやすみモード」機能を提供している。Roamのデータによると、ユーザーは夜間と週末にログオフするのが一般的だという。特定の会議の存在を同僚に知られたくないとしても、隠すことはできない。「透明マントはない」と、ラーマンはまたもやハリー・ポッターに絡めてジョークを飛ばす。だが、代わりにいつでも電話をかけてプライベートな会議を持つことができる。
一方でラーマンは、従業員をオフィスに戻そうとする動きがRoamの需要に影響を及ぼすことを懸念していないようだ。ハイブリッドワークを取り入れている組織では「成功する企業の100%は分散型だ」とラーマンは言う。「企業が解決すべき課題は、金曜日は在宅勤務を認めるべきかどうか、だけではない。テキサスに営業担当者がいて、フィリピンにコールセンターがあり、バージニア北部に開発センターがあるような場合に、会社の各部門をどのように連携させるか、ということだ」。ハイブリッドワーカーの所在地を把握できるよう、Roamではユーザーのプロフィールにある小さなボックスにオフィスの場所が表示される。