——1月28日まで、東急プラザ銀座で個展を開催しています。見どころは。
3年ぶりとなる個展では、ユニクロ、UGGなどブランドコラボの原画、ANA 機内誌『翼の王国』12月号などの原画も含めた新作34点を公開します。
ドイツ移住後のトラブル続きだった頃は、よくトラを描いていました。力強いトラは「負けたくない」というときに描くモチーフにしています。
一番最近描いたのは、オオカミです。トラと同じように強いし獰猛なイメージの動物ですが、オオカミは群れで行動するんですよね。私はずっと孤独だと思っていたけれど、海外でも味方になってくれる人にたくさん出会い「案外孤独じゃないんだな」と思えるようになってきました。そんな今の気持ちを表現しています。
全体として、2021年の原画展に比べると「絵に自分を投影している」という意識が強くなっていると想います。もしかしたら淡々と成功してきた人だと思われているかもしれないですが、たくさん悩み、壁にぶつかってきた。そういうグズグズでリアルな私を、見てほしいです。
——画家として、どんな存在になりたいですか。
日本をもっと元気づけるために、外から中を変えていく人になりたいですね。
ドイツに行って感じたのですが、日本人は日本人というだけで無条件に異国の人たちから愛されている。これは本当にすごいことで、先輩たちがつくってきたジャパンブランドのおかげです。でも今は次第にほころびが出てきていることも実感します。
今の日本の若者たちは夢も欲もないと言われますよね。欲がないということは成長がないということ。それって危うい気がするんです。私の絵をきっかけに、私の価値観や生き方を知ってもらいたい。それで「こういう生き方や考え方もあるんだ」と、息苦しさを感じている若者や同世代の人たちの救いになれば嬉しいです。
——最後に。伊藤さんは、富山県高岡市に帰省中の1月1日、能登半島地震で被災されました。復興に向けた取り組みをされているとのこと。現状を教えてください。
もともと日本酒関連のお仕事を進めていたこともあり、なにかできることはないかと考え、被災してすぐに富山県酒造組合に連絡をしました。富山県内の酒蔵も多くの被害があり、復旧の目処が立たないところもあります。
そこで、県内の酒造復興に向けた取り組みをスタートします。私が復興への思いを託した絵を制作し、それをプリントした特別ラベルを巻いた「復興ボトル」を販売しようと奔走しています。