この動きは、生成AIを用いた電話や選挙広告で今年の大統領選挙に影響を与えようとする試みの最新の事例と考えられている。
バイデン大統領の声を模倣した、もしくはデジタル処理したと考えられるこの電話は「23日の予備選挙に投票することは、共和党がドナルド・トランプを再び選出することを可能にするだけだ」と示唆したとNBCニュースは報じている。
この電話を受けた人々には、ニューハンプシャー州の元民主党委員長で、同州の予備選でバイデン大統領への投票を呼びかけている政治団体の代表のキャシー・サリバンの電話番号が知らされる。この電話を21日に初めて受けたというサリバンは、NBCニュースに対し「これは民主主義に対する攻撃だ」と述べ、州の司法長官に苦情を申し立てるつもりだと語った。
バイデン大統領は、2月3日にサウスカロライナ州で最初の予備選挙を行う民主党全国委員会と同盟を結んだため、23日のニューハンプシャー州の予備選には参加しない。大統領の陣営は、フォーブスからのコメント要請に即座に応じなかった。
今回の電話の背後に誰がいるのか、どれだけの有権者がターゲットにされたのかは不明だ。トランプ陣営の広報担当者は、この電話は「我々ではない」と述べ「関与していない」と付け加えた。バイデン大統領と候補指名を争う民主党のディーン・フィリップス下院議員(ミネソタ州選出)の広報担当者は、この電話を非難し「非常に憂慮すべき問題だ」と語った。
サリバンは、電話の背後にいたのが誰であれ「明らかにバイデン大統領にダメージを与えたい誰か」であることを示唆した。
フィリップス下院議員の広報担当者のケイティ・ドーランは「有権者の意欲を削ごうとするいかなる努力も恥ずべきものであり、民主主義に対する容認しがたい侮辱だ」と述べている。
AIを選挙に用いる試み
今回の偽電話のニュースが報じられる前から、政治家たちはAIを用いた有権者への働きかけを行ってきた。ペンシルベニア州の下院選民主党候補シャメイン・ダニエルズは昨年末に、Ashley(アシュリー)という名のAI選挙ボランティアを立ち上げて、有権者への呼びかけを行った。フロリダ州のロン・デサンティス知事は昨年6月、トランプがホワイトハウスのアンソニー・ファウチ元医療顧問とハグしている生成AIビデオを公開し、彼を支援する政治団体も7月に、生成AIで作成したトランプがソーシャルメディアの投稿を読む写真を用いた選挙広告を発表した。ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は昨年末に、本来は自分が話すことができないスペイン語やイディッシュ語などを用いたロボコールを使って市民に電話をかけていると批判された。世界経済フォーラムは先週「AIが生成した広告や誤った情報が選挙を混乱させることが今年最大の世界的リスクになる」と警告した。
(forbes.com 原文)