スポーツにも惜しみない投資が行われている。外国のスポーツクラブ買収や、サッカー選手クリスティアーノ・ロナウドとの推定年俸2億1400万ドル(約316億円)の契約など、2021年以降に投じられた額は63億ドル(約9320億円)に上る。スポーツを利用してイメージ向上や問題の隠蔽を図る「スポーツウォッシング」だとの批判もある。
主要産油国でありながら、石油は脇役に追いやられているようだ。サウジの原油生産量は最近、米国とロシアに次ぐ世界3位に転落した。しかも、各種プロジェクトへの投資には余剰資金を回しているわけではないため、財政赤字もかさんでいる。
むしろ、サウジは新たな経済分野に賭けており、閉鎖的で後進的な王国というイメージの払拭を試みている。事実上の最高権力者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の下、「次のドバイを目指している」とみる評論家は多い。
すなわち、君主制の権力を維持しつつ、伝統主義的な法制を緩和するということだ。例を挙げれば、女性の自動車運転が解禁され、女性経営者への支援も始まった。音楽フェスティバルをはじめ、外国人向けの大規模イベントも開催されるようになった。
その裏で、ムハンマド皇太子は国営石油会社サウジアラムコの売却にも着手。2022年度に1610億ドル(約24兆円)の純利益を計上した同社は、今なお政府管理下にあるものの、少数株式の売却を進めており、世界で最も時価総額の高い石油会社となっている。
サウジは他の分野でも主導権を握らんとしている。膨大な鉱物資源の採掘計画があり、この1月にはリン鉱石、金、銅、亜鉛、レアアースといった未開発鉱物資源の推定価値を1兆3000億ドル(約192兆円)から2兆5000億ドル(約370兆円)に上方修正した。