世界各地で紛争の煙がくすぶる一方で、ラスベガスではいつものように華麗なるテクノロジーショーケースが展開され、デモや政治的な動きは影を潜めていた。CESで有名なスタートアップショーケースエリア『Eureka Park(エウレカパーク)』では今年もウクライナとイスラエルが出展していた。紛争があろうともテクノロジースタートアップの勢いは止めてはならないというメッセージだろう。
中国はファーウェイ事件以降出展が減ったが、今年は久々Alibabaが出展していたり、数多くのガジェット系サービスを展開する中華系の出展が賑わいを戻していた。
かくして世界150カ国から4300出展社の出展、135000人の参加者が集うCES 2024は、今年も盛況のうちに12日幕を閉じた。
さて、今回のCESで最も印象深かったのは「AI」、「サステナビリティ」、「ヒューマンセキュリティー/インクルージョン」の3つのテーマだ。
この3テーマに対して「人間や地球のために営利企業としてできることは何か?」その問いの姿勢に真摯に向き合っていた出展社を紹介していく。
AI
まず「AI」。2023年の生成AIブームを背景に今まで以上に多くの企業が生成AIを活用したプロダクトを紹介していた。CES主催CTAが提供するテックトレンドセッションでも、生成AIの登場のおかげで一般消費者のAIに対するネガティブな印象が薄れてきているという。サムスンは「AI for ALL」をプレスカンファレンスのスローガンにしていた。サムスンが今まで推し進めてきたコネクテッドな家電がAI機能を有することにより、デバイス間でコンテンツ体験をシームレスに連動させる。また、AIによるデバイス制御がエネルギーのピーク時を自動的に回避し、エネルギー料金の節約に貢献する。サステナビリティーにも貢献するAI、を打ち出していた。
アメリカ最大の小売業者ウォルマートは、マイクロソフトと手を組み、AIを駆使した新しいショッピング体験の提供を開始するとCESにて発表した。ウェブサイトやアプリにAIを統合し、顧客の行動を分析して購入提案を行う仕組みを構築するそうだ。使用されるAI技術は、ウォルマート独自の技術とマイクロソフトのAzure OpenAIサービスに基づいた、小売業向けの検索機能を組み合わせたものらしい。
ウォルマートの新しい生成AIは、iOSとAndroidのモバイルデバイス、および同社のウェブサイトから利用できるようになり、消費者メリットとしては個別の商品を一つ一つ検索して購入していく代わりに、「誕生日祝い」「クリスマス」などのイベントを自然言語で入力することで、おすすめの商品を探すことができる。イベント準備にありがちな買い忘れを防いでくれそうで良い。